今回は、いつもとは少し違う切り口で、最近の出来事から企業マネジメントのヒントを探ってみます。
プロ野球広島カープのリーグ優勝が巷の話題を呼んでいます。前回優勝した1991年から数えて実に25年ぶり。日本のプロ野球全12球団の中で最も優勝から遠ざかっていたチームの優勝に、地元広島だけでなく全国から喜びと祝福の声が上がっています。
中小企業が大企業に勝った
カープの優勝が他球団以上の大騒ぎで迎えられているのは、25年ぶりという雌伏の年月が要因だとばかり思っていたのですが、様々な報道を見るにつけ、どうやらもっと重要な理由がありそうだと気づきました。一言で申し上げるなら、いわゆる雑草集団がエリート集団を凌駕した、私の関心に引きつけて言えば「中小企業が大企業に勝った」、そんな側面があるようなのです。
カープが最後に優勝した2年後の1993年、さらに3年後の94年に、球界は大きな改革に踏み出しました。前者は新人採用における逆指名制度(希望入団枠制度)、後者は中堅選手の自由意思移籍を認めるフリーエージェント制度の導入(決定は93年オフ)です。これらの新制度は、一部の人気球団主導で進められた、明らかに「金持ち球団=大企業」に有利な施策でした。プロ野球界唯一の「市民球団=中小企業」であるカープは、球団創設以来常に運営資金に乏しく、この大改革を受けて一気に苦境に立たされたのです。
ドラフトで欲しい選手から逆指名を受けるには高額の契約金が必要になり、「目玉」と言われるような有望選手は全く手の届かない存在に。さらにフリーエージェント制度で、選手は最短7年で自分の希望する他球団への移籍が可能になり、自軍で育てた主軸選手が高額年俸で金持ち球団に引き抜かれる事態が相次ぎました。カープが25年の長きにわたって優勝争いから遠ざかった理由は、そんなところにもあったのです。