経営者も人の子、驕りもしよう ゆえに欠かせぬ諫言の仕組み

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   人間性は変化します。会社をつくった当時は、清い大義名分と強い意志をもっていた経営者も、会社が軌道に乗り、いろいろなところでいい目にあうようになると、人間性が変化することがあります。

   驕り、高ぶり――これは本人が気づけば治まりますが、驕っている本人は往々にして気がつかないものですよね。かく言う筆者もそうかもしれませんが......。

 

   ある経営者がおっしゃいました。

「社長待遇というのがあるでしょう。取引先にちやほやされ、いろんな会合に行くと上座にすわらされる。そういう待遇に慣れてしまうと、人間は弱いもので、物事が自分の意図通りに行かないと我慢できなくなる。それを驕りというのではないでしょうか」

   こういう冷めた見方ができれば、驕りとは無縁な日を過ごせるのでしょうが、実際は難しいことです。

謙虚な姿勢と考え方を

実るほどこうべを垂れる
実るほどこうべを垂れる

   別の経営者はこうおっしゃいました。「自分がこの会社を経営しているというよりも、この期間だけ、会社をお預かりしている、と考えています」。このような姿勢を変わらず維持できれば、謙虚に経営と向き合えるはずです。

   日経ビジネスが1984年に出版した『会社の寿命』では、会社が自らその命脈を絶つ要因は大きく分けて2つあると言っています。

   (1)経営者が変身する努力を怠る

   (2)無謀な多角化によって、事業の命を絶やす

   この2つは二律背反しています。変身する努力をしなさい、と言っておきながら、無謀な多角化はしてはなりません、と言う。いったい、この2つはどう違うのか、どこが境目なのでしょうか。

   変身して企業が成長すれば多角化路線は当たったと言われ、業績が下降すれば無謀な多角化と言われる。いずれにしても結果が問われます。仮に多角化が成功しても驕ることなく気持ちを引き締めなければなりません。だからこそ、謙虚な姿勢と考え方を失わないための人間性が必要なのでしょう。

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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