経団連の榊原定征会長は2016年9月12日、来年も今年と同じスケジュールで採用活動を行う方針を明らかにしました。
「2年連続でスケジュールが変更された大学生の就職活動について、経団連は12日、来年は変更せず、ことしと同様に会社説明会を大学3年の3月、採用面接を大学4年の6月に、それぞれ解禁する方針を決めました」(NHKオンライン)
ところが、再来年については、
「今の大学2年生が対象となる再来年以降について、榊原会長はスケジュールを改めて検討し、来年の春までに公表したいという考えを明らかにしました」(同)
というわけで、今回のテーマは「経団連会長の見直し発言」としました。
維持する気なら「来年」でいい
この経団連会長発言のポイントは「来年の春」です。もし、「3月説明会‐6月面接」を維持する気であれば、「再来年の時期については来年、改めて検討したい」と公表時期をぼやかすはずです。あるいは公表時期を出すにしても、「検討のうえ来年の秋ごろまでに時期を決めたい」などと、秋ごろを指定するはずです。
9月ないし10月に時期を決める、ということであれば、現行の「3月‐6月」というスケジュールから大幅な変更はあり得ません。関係機関との調整や、イベント会場の予約などを考えれば半年ないし8か月程度の余裕が必要だからです。
しかし、今回の会長発言は「来年の春」。早くて3月、遅くとも5月。であれば、スケジュールの大幅な変更が可能となります。すなわち、今回の「来春」発言は、事実上、再来年の就活時期を見直す、と表明しているようなものなのです。
では、時期はどのように変更されるのか。4案、予想してみました。
関係者のメンツ丸つぶれ
現行:3年生3月説明会‐4年生6月面接
A案:3年生12月説明会‐4年生4月面接
B案:3年生12月説明会‐4年生6月面接
C案:3年生2月10日または16日説明会‐4年生6月面接
D案:3年生10月または11月または12月説明会‐3年生3月面接
A案は、2015年卒まで適用されていたスケジュール。採用担当者と大学関係者の大半は、このA案を支持するでしょう。個人的には、私もこの案が一番現状に沿ったもの、と考えます。榊原会長も、2015年9月の記者会見で、「元(12月説明会‐4月面接)に戻すのも選択肢」とコメントしています。
ネックはメンツです。このA案をとると、「先祖返り」「あれだけ大騒ぎして変更したのに、元に戻すとは」などなど、当時の就活時期変更を進めた関係者が批判されることになります。彼らからすれば、メンツが丸つぶれとなる案であり、そう簡単に飲めるものではありません。
B案は、現状で行われている冬インターン(という名前の企業セミナー)を認めて、学生が企業を選ぶ期間を長くみよう、というもの。これも悪くはないのですが、A案と同じく、メンツが問題。
A案ほどには、時期変更を進めた関係者が批判されることはありません。ただ、就活時期の変更はそもそも「就活の長期化の是正」が目的でした。B案は、長期化を是認するという点で、時期変更を進めた関係者からすればA案同様メンツのつぶれる決断となります。
D案は、一部の採用の専門家が検討した案。3年生3月に選考解禁だと、「周回遅れ」となった4年生が卒業間際に再度、就活のチャンスに恵まれ、滑りこみで内定をもらってすぐ就職できる、というメリットがあります。
このメリットは捨てがたいのですが、「3月選考解禁」だと、逆算すれば広報解禁は11月。長く見積もれば10月ですが、そこまで行くと長期化批判、すなわちメンツの問題が絡んできます。と言って12月解禁だと、今度は期間が短すぎて、夏休みや9月~11月のインターン(という名目の企業セミナー)が盛んになるだけ。
私が予想する最有力案は......
さて、C案は、現行のスケジュールを2~3週間ずらしただけです。この案は今年、2018年卒採用についても結構、検討された模様です。なぜ、2月1日ではなく、10日か16日(あるいは15日)かといえば、大学によっては2月上旬まで後期試験があるためです。
中途半端ではありますが、現行スケジュールの欠点である「業界・企業研究の時間不足」を2~3週間程度ですが改善できます(その程度の延長で解消できるか、という疑問もなくはないのですが、それはさておき)。A・B・D案のように、過去の就活時期変更を進めた関係者のメンツをつぶすこともありません。
今のところ、このC案が最有力、と私は予想します。
ただ、本来は学生にとって最良の方策を考えるのが筋というもの。それで言えばA案「12月説明会‐4月面接」が一番。
優先されるのはメンツか、学生か、企業か。今後に注目です。(石渡嶺司)