黄昏の丸の内、オフィスビルにあるコーヒー店での話。金融系エリートビジネスマン風の男が3人、油を売っている。彼らの会話が耳に入ってきて、どうやら職場の人気を独り占めしていた女性社員が結婚したようだ。相当の美人で、相手の男性は、彼らの同僚らしい。中の1人が「俺のほうがイケメンで、なんで○○のような、ダサいやつが彼女と結婚するんだ」と憤慨している。
「かわいそうなやつだ」
それをクールに見ていた1人がぽつりと言う。
「みんな落ち着け、騒ぐな、あわてるな。心理学的には、美人と結婚するとストレスが多くなるらしいよ。あいつもかわいそうなやつだ、と思えばいいじゃないか。これ以上、ストレスが多くなると、俺たちアウトだよ」
聞いていた2人もその言葉にえらく納得したような表情で、
「わかる、わかるよなあ。あんな美人と結婚したら、毎日、緊張して、リラックスできないものなあ。かわいそうなやつだ」
「そうだ、そうだ。俺たちは美人を避けて生きていこうな」
やがてエリート風独身男性3人は、3国同盟の誓いを新たにした風情で席を立った。
なんとなく耳をそばだてていた私は、「えっ、美人と結婚するとストレスが増えるのか」と驚いた。以前にも耳にしたことはあるが、学術的には記憶がない。本当かな、という疑問が湧いた。