二代目は「ワンマン」と選択
それから数年後、従業員20数名の中小企業G社で、創業者の死去に伴う二代目へのバトンタッチを機に行われた組織活性化のお手伝いをしました。H社長は就任から半年。まだ社長としてどう振る舞っていいのかよく分かっていないようで、指示は出せども余計なことは一切言わない、「多くは語らぬ経営者」のイメージで指揮を執っていました。
しかし会社に足を運ぶうちに見えてきたのは、指示の意図が十分に汲み取れないような社長の態度が、周囲の人たちにしっくり来ていないというもやもやとした実情でした。
もうひとつ分かったのは、この多くを語らない二代目が、何か事があるたび周囲に社員の「レッテル貼り」発言をしていたことです。「ここだけの話」のつもりで幹部社員に話しても、小さな組織では回り回って本人の耳に入ることもあり、「自分は社長に評価されていない」「社長に疎まれている」などと受け取られ、それが元で退職が相次ぐといった事態も引き起こしていたのです。
小さな所帯で複数の社員が相次いで退職するというのは、穏やかではありません。そこで私は、社員が二代目社長のやり方をどう見ているのか、誰がどんな回答をしたか社長には一切公表しないという約束で、全社員に記名式のアンケート調査を実施しました。するとその結果に、H社長自身が驚愕したのです。
とくに社長が我が目を疑ったのは、二代目に対するイメージを「ワンマン」「牽引指導役」「仲間的」「その他」の4つの選択肢で聞いた設問に、約80パーセントの社員が「ワンマン」を選んだことでした。
「僕のどこがワンマンなのさ。本当に必要だと思う指示以外、余計なことは言わず、皆の自主性を尊重して、乱暴なやり方は一切していないつもりなのに。これはひどい誤解だよ。なんとしても早急に誤解を解かなくちゃだめだ。なんとかしてくれ!」