「彼は、言ったことをすぐ忘れるからな......」
「あれは、理屈ばかりこねてすぐやらないんだよ」
「あいつは、いつも弱気なんだよなー」
訪問先企業の社長が、自社の社員をこんな具合に評するのを随分とたくさん目にしてきました。
これらは「レッテル貼り」といわれる類の発言です。
自身への戒めと備忘録と
銀行員時代、社員への「レッテル貼り」が得意なある社長に、「社員に対する社長のレッテル貼りは感心しませんね」と苦言を申し上げたところ、こんなふうに切り返されたことがあります。
「なぜするかって、そりゃ注意喚起さ。『あいつは、言ったことをすぐ忘れるから』というレッテル貼りにはその続きがあって、『たびたび確認しながら進めなくちゃいかん』という私自身への戒めと、社員に対するつどつどの指導を忘れないための備忘録にもなるわけなのだよ。レッテル貼りはむしろ効率的、かつ教育的」
なるほど、これはちょっとした目からウロコのご指摘でした。「レッテル貼り」というと、どうも悪い行いのように思われがちですが、必ずしもそうでない場合があるとは、意外なお話でした。この社長からは、「レッテル貼り」で大切なのは、「貼りっぱなしにしない」ことだというヒントをいただいたのでした。