住友電気工業は、自動車用ワイヤーハーネス(組み電線=自動車内に張り巡らされ、電源供給や信号通信に用いられる複数電線を束にして、さまざまなパーツをつなぐ集合部品)を柱に好業績を続けていて、これをメインとする自動車関連事業の売り上げが全体の51%を占めている。
世界的に優れた技術をもつ地味な優良企業。業績が安定していて、日経平均株価と連動する傾向が強く、安心して保有していられる銘柄の一つだと思っている。
「自社株買い」発表、配当へ期待
住友電工株は、成長性や安全性、財務内容ともに優れた銘柄で、以前から「ほしい」と思ってはいたが、高くて手が出せずにいた。たまたま「会社四季報」をめくっていて、2005年8月1日に売買単位が1000株から100株に変更になっていることに気づいた。
ちょうどそんなとき、2007年4月26日付の日本経済新聞が「企業の決算発表や大型連休を控えて見送り気分が強く、東証では日経平均が大幅安」と書いていた。住友電工株はその2日前の24日に年初来安値1665円をつけており、27日に1株あたり1714円37銭で200株を初めて購入した。仕事柄、自動車とのかかわりが深く、ワイヤーハーネスがいかに重要な部品かも承知していたので、「これは!」と思ったのだった。
その後、今日に至るまでに25回、売り買いを繰り返した。2015年1月末に800株を保有したのがピークで、同年5月18日に1850円の高値を付けたところで200株を売却した。
最近では、2016年2月9日に1380円50銭の年初来安値(当時)を付けたのを見て、1392円で100株を買い増し、平均取得価格を下げた。「買い増しておいて、よかった」と、ホッとしたのは3か月後の5月13日。住友電工が発行済株式の2%にあたる1600万株、200憶円を上限とする自社株買いを発表したためだ。言うまでもなく、自社株買いは株主還元策の一つ。配当への期待も膨らんだ。
さらに2016年8月2日付の日本経済新聞は、同社が前日に発表した2016年4~6月期決算の純利益が前年同期比41%増の215億円だったことを伝え、「円高が減益要因となったが、売上高の過半を占める自動車用ワイヤーハーネスの販売量が欧州や北米を中心に伸びた。繰り延べ税金資産を計上し、税負担が大幅に減ったことも寄与した」とあり、営業利益を70億円押し下げた円高もこなした。
改めて、住友電工という会社がいかに堅実であるか、再認識した。
日経平均株価の動きに連動
住友電工株は、比較的ふだんは株価変動が少なく、日経平均株価に穏やかに連動する傾向がある。そのことに気づいたのは、この株式を初めて買ってから6年後の2013年7月9日、日本経済新聞の株式欄を見ていたときのことだった。
前日8日の株価は、住友電工株が前日比36円高の1301円、「景気敏感株」とされる三井物産株が11円安の1292円で、三井物産のほうが安くなっていた。この状況を見て、今がチャンスと、その日のうちに住友電工株を1320円で100株売却。それを元手に、平均取得価格を下げようと、三井物産株を1301円で100株購入して、銘柄を入れ替えた。
周知のように、日経平均株価の動きは日々、またインターネットであれば分刻みで見ることができる。その動きとほぼ同じに株価が変動するのだから、株価が大幅安で全銘柄が下げているところで「買い」を入れておけば、安く仕入れられる。そのうえ、狙っていた別の銘柄が下げすぎた局面で、住友電工株を売って乗り換えることにも適している、といえなくもない。
つまり、売り買いのタイミングがわかりやすく、いわば「調整弁」の役割を担う銘柄といえ、保有する株式の中にはこうした銘柄を組み入れておいてもいいと思っている。
住友電工株は、利益確定売りを進めたため、保有株数が300株と少なくなってしまったが、2016年6月発行の会社四季報によると、17年3月期および18年3月期と2期連続で増収増益を見込んでおり、PBR(株価純資産倍率=1株あたりの純資産に対して株価が何倍まで買われているかを表したもので、1倍を割ると割安のサインになる)も0.88と1を割っている。 まだまだ期待できるように読めるので、当面保有しておきたいし、大きく下げる場面があれば買い増したいと考えている。(石井治彦)
住友電工株
2016年9月9日現在 300株保有 平均取得価格 1479円64銭
現在の損益 △ 7008円
年初来高値 2016年1月 4日 1732円00銭
年初来安値 2016年4月15日 1201円00銭
直近終値 2016年9月 9日 1503円00銭