米の輸出国に米を送る感覚に似て
「オリンピックはどこでやってると思う?」と英語で聞いても、「Where」と「Olympic」だけ聞き取って、カンボジア市内にある一番大きなスタジアム「オリンピックスタジアム」の場所を一生懸命説明してくれる人が多数。きっと、オリンピックスタジアムの名が「4年に一度開かれる、世界中の選手が集まる競技会」から付けられたということも知らないんでしょう。
プノンペンに住んでいる人たちは、スマホの保有率が高く、ネット経由でオリンピックの情報を手に入れることも簡単なのですが、その存在すら知らない。知っていても興味がないのです。日本人のほとんどが、ムエタイの世界王座決定戦の勝敗に興味がないように。
現場では実際のところこんな感じなのですが、日本人の感覚で「出場枠を奪われたから悔しいに違いない」と勝手に想像して、批判したり擁護したりするのはどうしたもんかと思います。
この感覚は、「カンボジアは貧しい国だから、お米を送ってあげたらみんな喜んで食べるだろう」と、売るほど米を作っているカンボジアの農村に米を送りつける人たちに通じるものがあります。
カンボジアのオリンピック代表として元日本人が出場するというのは、おそらく日本人感覚でいうと、クリケットの世界選手権の日本代表に元パキスタン人が選ばれた、ぐらいの問題なのでしょう。たとえその選考基準に問題があっても、大半の日本人は気にも留めないレベル。
ちなみに、猫ひろしを知っていた数少ないカンボジア人は、「面白いでーす」などと言っていました。
国籍を変えてオリンピックに出場することに賛否が分かれるのは理解できます。しかし、その意見を訴えるために「カンボジア人がかわいそう」を勝手に作ってしまうのは問題です。
怒りをぶつける場所を無理矢理作って怒っても精神衛生上よくないので、ぜひカンボジアに遊びに来て、アンケート調査でもしながら「自分たちとは全く違う感覚の人たちがいる」ということを肌で知ったほうが、自分の世界が拡がって楽しいと思います。(森山たつを)