運がよかった東京での仕事
僕は、日本生命保険という大企業に30年以上勤務していながら、なぜ発想が自由でいられたのかといえば、東京に30歳で出てきてロンドンに赴任するまで10年以上、「MOF担(財務省担当者)」をしていたからではないでしょうか。
中央官庁の役人はよく勉強している人が多い。自分の専門以外のことを好きで勉強している人も少なくありません。それこそ専門家はだしの本を書くような人もいます。そういう人たちとの出会いがあり、毎晩のようにお酒を飲んで議論をする機会があった僕は本当に恵まれていたと思います。
官僚だけではなく、日銀、金融機関、メディアなど、いろいろな世界の専門分野の人とも付き合いました。よく「出口さんは省庁の次官を含めて偉い人の人脈がすごい」と言われたりしましたが、そうやって毎晩のように飲んでいたたくさんの人の中から、たまたま偉くなる人が出たというだけのことです。
内部の仕事をしていたら、おそらく、朝から夜遅くまで働いて、同僚と仕事やプライベートの話をしながら楽しくお酒を飲んで、という生活を送っていたと思います。そういう意味ではたまたま運がよく、そういった人と接点を持つ機会が多かっただけです。
楽しくなければ、面白くなければ人生じゃないでしょう。人は何によってつくられるかといえば、やはり人、本、旅ではないですか。僕自身、比率でいえば本が50%、人と旅が25%ずつかなと思っています。楽しい人、面白い人と会い、好きな本を読み、行きたいところに行くこと(旅)にお金を使うことが人生を楽しく豊かにしてくれるのだとつくづく思います。(出口治明)