私とカナダストレス研究所が共同で開発し、日本でも長年の実績がある「THQストレス診断」というものがある。日本でストレスチェックが義務化される40年以上前から取り組んできたもので、他のストレスチェックの追随を許さないストレス診断と自負している。
しかし、一つだけ評判の悪い点がある。それは「食物摂取」に関する質問があること。それだけで導入実施を見送る会社もあるぐらいだ。
THQストレス診断では、砂糖、塩分、脂肪、お酒の摂取、さらには精製食品(例えばインスタント食品のように加工された食品)の食事に占める割合まで聞く。これが不評の原因である。つまり、「ストレス診断なのに、なぜ関係ない食物についてまで聞くのか」という疑問を人事担当者が持つのだ。私にとっては、はなはだ不本意なことだ。
病を医するものは
たまたま目にした報道によると、米ヒューストンのハーマン記念病院のガース・デイヴィス医師が糖尿病や高血圧、肥満の患者に、薬の調剤処方をやめて「推奨する野菜や果物」を処方し始めたという。
日本でもオーガニック食品が重視されつつあるが、薬の代わりに野菜や果物を処方するというのは、聞いたことがない。「うつ病を食事で治す」という話なら、臨床現場でしばしば耳にするが、野菜や果物を処方することはない。「薬漬け治療」が問題視される昨今、自然な食物から栄養成分を摂取して、しかも病の治療ができたらいいに違いない。副作用の心配もない。
そもそも医聖ヒポクラテスは、「病を医するものは自然なり」といい、人間の持つ自然治癒力を重視し、食事の大切さを説いている。やがてデイヴィス医師による治療の効果が確認され、そのような方法が世界に広まっていくと、どんなに楽しいだろう。病院に行って、野菜と果物をたんともらってくると、今日はどうやって食べようか、どんな料理を作ろうか、といった楽しみ、わくわく感も加わるだろう。