今回の調査は、株式を上場していない会社を対象に行いました。それらの企業に、あえて、今後の株式公開の可能性について聞いたところ、以下のような回答がありました。
自分が経営している間は未公開:22%
できれば公開したい:4%
74%は「公開の予定はない」と回答し、「自分が経営している間は」の22%と合わせると実に96%が公開の予定なし、という結果になっています。
できれば公開したい、と答えた企業は、たとえば経営者が個人保証で借金をしていて事業の継承に困っている、後継者がいないので株式を上場することで後継者を得ようとしている、あるいは企業の知名度を上げてよりよい社員の獲得へ進もうとしている、などの理由が考えられます。
平均20年弱で上場
株式を上場するまでの経営年数に関するSMBCコンサルティングの調査によると、2005年に上場した158社の平均は18年7か月。その中には30年を超えた企業も33社、60年を超えた企業が3社含まれています。最短期間は外資系サービス業で12か月。最長は化学会社の80年3か月でした。1995年の調査では平均が32年。マザーズやヘラクレスなどの新しい上場市場ができたことで、かなり平均年数が短くなりました。
さらに、2011年に上場した37社の平均は18年9か月でしたから、近年ではだいたい20年弱が平均的な上場までの期間になっているようです。
創業100年を超える長寿企業が上場すればかなり話題になると思っておりましたら、驚くことに、1598年(慶長3年)創業、以後420年になんなんとする超長寿企業、綿半ホールディングス(長野県飯田市発祥)が2014年12月に上場しました。たいへんな勇気と決断であったことと思います。
資金は十分あるから
株式非公開を続ける理由を聞いたところ、第一の理由に挙がったのは「そのほうが経営しやすい」でした。長寿企業は自己資金を豊富にもっているもの。「外部の資金は必要ない」と答えた企業は22%でした。これらの企業にとっては、株式上場は煩わしいだけのことなのでしょう。
上場すれば株主利益を考える必要が出てきますし、毎期、配当をしなければなりません。株主総会で意見を聞き、経営に取り入れていくことも求められます。近年では、経営上のトラブルを咎められて、株主代表訴訟を起こされることもありえます。
自己資本比率が20%を超えると、無借金状態だと言われます。長寿企業には、自己資本比率の高い企業が多いので、あえて株式を上場してまで借金をする必要がない、というのが本音のようです。また、昨今M&Aも活発になってきており、そうした動きに対する警戒感は、長寿企業なればこそ、強いものがあります。
ちなみに、筆者の会社は設立30年で、自己資本比率は31%ですので、株式の公開に関心はありません。(浅田厚志)