コスト削減のプレッシャーで
以前、雪印乳業が食中毒事件を起こして大問題になったことがある。その後の不正もあって、結局、雪印乳業は解体されてしまう。
あの時、トップは食中毒の原因となったパイプの汚れ落としの掃除を毎日しているものと認識していたが、実は、毎日掃除をしていなかった。コスト削減のプレッシャーのために、現場は掃除の回数を減らしていたんだ。
「そんなこと聞いてないよ」とテレビカメラの前でトップが驚愕の声を発したが、あれは惨めだった。噂によると、そのトップは、現場よりも数字を重視する人で、とにかくコストカットが大好きだったらしい。コストカット、コスト削減ばかり連呼するトップだったそうだ。
悪い数字が上がってくると、怒鳴るだけ。これじゃ現場は、「員数合わせ」の手法で適当な数字、すなわち毎日掃除をしています、だけど費用は増えていませんと報告することになる。
昔から「無理が通れば道理が引っ込む」というけれど、今、起きている不正は「トップの無理が通れば、現場の道理が引っ込む」という状態で、トップが頭を切り変えない限り、繰り返されるのは悲劇? あるいは喜劇だ。(江上剛)