数字好きトップは現場知らず 無理が通れば待つのは悲劇か(江上剛)

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   本当に悲しくなるくらい日本の会社は病んでいる。三菱自動車、スズキ、東芝という日本を代表するような大手企業がデータや会計の不正を長年にわたってやっていた。どれもこれもみんな会社ぐるみだと言っていい。

誰もがおかしいと感じながら

命令であれば仕方ありませんが
命令であれば仕方ありませんが

   会社ぐるみというのは、トップが不正を具体的に指示したかどうかは分からないが、現場で日常的に不正が行われていたということだ。誰もがおかしいと感じながらも、発覚しないまま、ずるずると不正が続いていく。

   いったいどうしてだろうか。私は、トップが目先の競争にとらわれるあまり、現場の疲弊を知らなさすぎるからではないかと思う。言い換えれば、知ろうとしていないのだ。

   昔の日本陸軍みたいに精神論で勝てると思って、突撃命令を乱発し、やたら貴重な命を浪費しているのだ。

   トップが「突撃!」って叫ぶ。今は「チャレンジ!」かな。疲れ果てた現場の社員たちは、「仕方がないなぁ」と言いながら数字だけ合わせるんだ。これを「員数合わせ」って言う。

   グローバル競争の時代は精神論だけでは勝てないのを、トップは早く知るべきだ。自覚なさすぎ!

   例えば三菱自動車を例に取れば、少ない開発費で他社を凌駕するような燃費データが達成されること自体を疑わねばならない。疑ってやることが部下への愛情だ。

   「もっと、もっと」「チャレンジ、チャレンジ」「負けて悔しくないのか」など、叱咤激励するだけで具体的な予算も人員も付与しない。そりゃ現場は、うんざりするだろう。それでトップが喜ぶような「員数合わせ」という手法で、数字だけを調整するようになる。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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