株式には業種・銘柄によって「個性」がある。たとえば、「景気敏感株」は経済指標との連動性が高く、商品相場や為替市場の動きと連動する傾向が強い。三井物産も、その一つだ。
三井物産は商社の中で資源分野に強く、とりわけ鉄鉱石と原油が柱である。事業構成は、金属資源とエネルギーがそれぞれ14%で、合わせて28%を占める。
「30ドル割れ」で底値と判断
周知のとおり、昔も今も日本は多くの資源を輸入に頼っている。大手商社はどこも、さまざまな資源を取り扱い、それらの価格に業績も左右されやすい。言うまでもなく、「原油」は日本のエネルギー政策の根幹をなすもので、その価格変動は景気を刺激するし、石油・エネルギー会社や大手商社はその動向に一喜一憂する。「原油」が、新聞記事にならない日はないといっていいだろう。
さて、三井物産株だ。初めて買ったのは1972年頃。一時、株式投資を控えた時期を経て、2012年4月に1310円で100株を購入し、その後500株まで買い増した。アベノミクスによって日経平均株価は11年11月25日(民主党・野田内閣時の安値)の8160円から15年6月24日には2万868円の高値へと向かうことになる。その過程で300株を売却して、7万円ほどの利益を得た。保有株数が200株に減ったため、下げたところで買い増した。
2016年1月、そんな三井物産株をさらに買い増す機会を得た。折しも、日経平均株価は1月20日に昨年来安値を更新していたうえに翌21日が週末の金曜日に重なって、398円安の1万6017円と大幅安で取引を終えた。これは、三井物産株の平均取得価格を下げる「チャンス」と判断。21日、1248円の安いポジションで100株を買い増した。
背中を押したのは、この日の日本経済新聞にあった「(原油価格の下落で)15年の1年間でテキサス州に本社を置く掘削会社の破たんは20社に達した。大半がシェール企業だ」との記事。「ここが原油の底値ではないか」と、直感した。
その後、夕刊で「(指標の)WTIは一時26.19ドルまで下落し12年8か月ぶりの安値をつけた」との記述を見つけ、翌22日の朝刊では「原油価格が1バレル30ドル割れとなると、ほぼすべてのシェールの油井が採算割れとなる水準」とあり、確信に変わった。
企業倒産が相次ぐ状況は、相場の底を判断する材料にもなる。これらの記事は買い時、あるいはその後の株価動向を予測するうえで参考になった。