大学名差別に「隠れ要因」 嫌われるの承知で言いますが

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年次によって差別に「振れ幅」

   大学名差別については、取材していくうちに、あまり表に出ない「隠れ要因」があることに気づきました。

   「隠れ要因その1:卒業年次による学歴フィルターの振れ幅」

   前述の通り、ここ数年、売り手市場が続き、企業側は採用ターゲットの大学ランクを下げています。

「学生が有利な売り手市場の年であれば、就職しやすく、学生が不利な就職氷河期の年であれば、就職しにくい」

   これが大学名差別を促す隠れ要因です。何を当たり前のことを、とお叱りを受けそうです。運悪く就職氷河期にぶつかった世代からすれば、MARCHクラスの出身者であっても、「うちの大学は不当に差別された」と感じるはず。逆に、売り手市場に当たった世代は、日東駒専クラス出身者であっても、多くは首尾よく内定を獲得して「差別などなかった」と感じるに違いありません。

   ところが、SNSなどネットの世界になると、この当たり前の事実がないがしろにされがちです。

   ネットの世界では、大学名差別が話題になるたび、一般人も含めて多くの関係者がこの話題に参入します。その際、卒業年次を含めた個人属性を開示して投稿する物好きはほとんどいません。いつのものとも知れない個人の経験にのみ基づいて論じます。そういう、悪く言えば感情論が、いつの間にか事実にすり替わってしまうことだってよくあります。しかも、ネットには、古い記事がいつまでも残ります。それがはるか昔の就職氷河期世代のものだったとしても、「大学名差別」「学歴フィルター」という見出しだけで読まれてしまいます。古い情報であっても、読んだ学生には、最新情報であるかのように受け取られてしまうのです。

   「隠れ要因その2:『夢』という名の悪い魔法」

   2016年8月1日付の本コラムでも書きましたが、2000年代に入ってから「夢」を至上とするキャリア教育が小中高で盛んになりました。大学もキャリア教育に力を入れますが、小中高の影響もあってか、やはり「夢」中心。

   ところがこの「夢」というもの、悪い魔法とでも言いますか、勘違いする学生の続出を招きます。

   たとえば、日東駒専クラス。私の出身大学である東洋大の学生が新聞社を志望したとしましょう(実際、そうした相談を受けたこともあります)。東洋大は新聞社への就職者が一定数いる大学です。大学ランクが低い、ということはありません。が、その学生が、

「新聞社志望です。でも、新聞は読んでいません。だけど、クリエイティブな仕事がしたいです」

   ごめん、それは無理。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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