労組を作りたいというなら 職場全体を考え覚悟を決めろ(江上剛)

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「給料がここ数年、上がりません。労働組合を作るしかないのでしょうか」

   労組を作ろうなんて、君は、労組がない会社に勤務しているんだね。中小企業かな。大企業でも新興の企業なんだろうね。昔ながらの大企業は労組が必ずあるから。

君に一目置くかもしれない

会社と断固戦うというなら
会社と断固戦うというなら

   君が労組を作りたいとか、労組に入りたい(会社にない場合は別の職能別労組や管理職労組などがある)と言えば、労組のほうは組織率が低下しているから大歓迎だろう。

   私も君の行動を制限したりはしない。不当労働行為になるからね。

   でも君の問題は給料が上がらないという不満だろう? これを解決するのに労組を作ればなんとかなるっていうのは短絡過ぎないか。確かに労組を作れば、君のために専門家がやってきて交渉をやってくれるだろう。それで給料は上がることもあるだろう。

   しかし私がアドバイスできるとすれば、労組を作る前に君自身が職場全体のことを考えて経営者と交渉すべきだってこと。

   労組を作るのはその後でもいい。経営者が全く君の意見に耳を傾けないならば、労組を作るのは労働者の権利だから。

   職場には、給料以外にも多くの問題がある。

   時間外労働、男女差別、過労死、セクハラ等のハラスメント云々。職場って、問題だらけだ。君が職場の不満をまとめて経営者に進言するくらい覚悟を決めたら、経営者は君に一目置くかもしれない。

経営者は労組が嫌い

   私は人事部に所属していたことがあるから、あえて言わせてもらうけど、経営者は基本的に労組が嫌いだ。

   労組があったほうが、職場環境が改善されて、経営効率が上がるんだけど、そんな考えを持っている経営者は少ない。労組イコール共産党と思っている。仕方がない。資本主義の世界だ。

   私は、若手行員の時、サービス残業を強いる課長に文句を言って残業をみっちり請求したことがある。課長はビビって「こんなことをしてもらっては困る」って言った。

   「あんたのくだらない指示でサービス残業が多くて困るんだ」と私。

   すると「君は共産党員かね」と彼。「違います」と私。

   結果は、余計な仕事の指示はしないとの妥協が成立したが、彼は私の人事ファイルに「不平不満が多い。気をつけるべし」と記入した。そのことは次の転勤先で課長から聞かされた。その課長がいい人だったから、私は人事上の不利益を被ることがなかったが、もしそのメモを鵜呑みにされていたら、私はスポイルされていただろう。

   労組を作る=不満が多い、と思われるから君も覚悟をしたほうがいい。(江上剛)

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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