「正しく叱る技術」を
私がそんな話を語って聞かせると、Y社長は、
「私もほとんど趣味サークルの延長のような企業に勤めて、その後独立したので上司らしい上司に仕えたことはありません。今は社長なので、部下が言ったとおりに動かなかったりすると、怒鳴ったり厳しく叱責することもありますが、確かに正しい叱り方というものは自分でも分かっていないのかもしれません」
と率直に認めました。Y社長も、やはり教授が言うところの「ベンチャー企業を一定レベル以上に成長させることができない経営者」なのでしょうか。コラムは、解決のためにはまず経営者自身が「正しく叱る技術」を身に付けることである、と結ばれていました。
「部下は上司の背を見て育つ」とは、今も昔も変わらぬ真理です。中小・ベンチャーでは社長といえども社員にとって上司。私がこれまで見てきた多くのベンチャー企業で、「管理者が育たない」という社長のお悩みの根本原因が当の社長自身の言動にあったということも多く、大学教授の見方は至極まっとうだと思われます。
半面、組織のトップとして自信とプライドに満ちた社長の言動を変えさせるのは至難の業でもあります。大学教授は机上の分析でいとも簡単に対策を処方してくれますが、現実はそう甘くはありません。
私の話に、「上場を目指すためには経営のかじ取りだけでなく、経営者としての資質変革も求められるのですね」と感想を口にしたY社長。上場という明確な目標を前にした経営者として、きっと高く厚い壁を乗り越えていかれるだろうと思いました。(大関暁夫)