投資は徒労と知る
投資をしていると答えた企業では、対象は株式と不動産でした。株式は、取引先から保有を依頼されると断りにくい面もあり、純粋な資産運用にはなっていないケースもあるでしょう。また、不動産は、自社の敷地用に購入した物件は資産運用に含まれません。投資はあくまでも転売用として買った土地、建物のことです。
続いて、資産運用をしていると答えた経営者に、その成果を聞いてみました。
大幅な利益を出せた企業はわずか4%。利益が確保できたのは21%でした。どちらでもない、損も儲けもなかったというのが50%を占めています。大幅な損失は3%、小幅な損失は20%ですから、全体の23%は損を出し、損得なしの50%と足すと73%はやらないほうがよかった、という調査結果になっています。なんと割に合わないものでしょうか。
多くの長寿企業は、会社も、個人も、長い歴史の中でしっかりと富を蓄積してきており、資金的にも、時間的にも余裕があります。したがって、焦って儲けようともせず、余裕資金で事業を行っているので、いまなお経営が継続しているのです。つまり、そういう余裕の資金であっても投資となると儲けられない。ましてや焦って行った投資では儲かるはずがない、と言えます。資産運用をしない経営者は、「どうせくたびれ儲けに終わる」ことを感覚的に知っているのでしょう。
大王製紙の井川意高前会長は、初めて行ったカジノで儲かって、それからのめり込んだそうです。まさに「触らぬ神に祟り無し」。大王製紙は1943年の設立ですから、今年で73年。どうしてこんなことになったのでしょうか。
長寿企業に限らず、堅実な経営をしている会社は財テクには不熱心です。あなたが勤めている会社がもしそうだとしたら、あなたもせいぜいNISAぐらいにしておいたほうが、社内で悪評が立つこともないのではないでしょうか。(浅田厚志)