「定番ネタ」論争に心揺れても 「ガクチカにウソはいけない」

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「私は尽くすタイプ」

   ちょうど、このイベントの行われたころ、連続不審死事件が話題になっていました。容疑者は夫や交際相手を次々と毒殺しては遺産を相続した、とされていました。その容疑者は、結婚相談所で交際相手を探す際に「尽くすタイプ」などとアピールして交際相手を見つけていました。しかし、実際には尽くすどころか、毒殺したらしいことが明らかになってきていました。

   この容疑者の自己PRって、学生の定番ネタと同じではないでしょうか。

   アルバイトもサークルも勉強も、学生の話には何から何までうんざり、と話す採用担当者は、それらを不審死事件の容疑者の自己PRと同じだと感じています。再婚相手に尽くす気などないのに「尽くすタイプ」、粘り強くもないのに「粘り強い性格」など、自己PRはいくらでもウソをつけます。そのウソを自己PRだけでなく「学生生活の話をしてほしい」というときにもするから「うんざり」なのです。

   一方、定番ネタ肯定論者の採用担当者も、ウソは嫌いという点では同じです。学生がありのままの話をしてくれれば、それを参考に自社に合う合わないを判断できます。だからこそ、「定番ネタでいい」というのです。

   万人受けするアピール方法などはありません。真面目に勉強してきた大学生活を「暗い」ととらえ評価を落とす企業もあれば、ストレートに「真面目」と評価する企業もあります。サークルでもアルバイトでも何でも同じです。それを学生の側から「大したことない」と自己否定して切って捨てないほうがいいでしょう。

   と、そんな話をしたところ、定番ネタ否定論の採用担当者も当初の敵意に満ちた視線はどこへやら。

「そうそう、そういうことです。定番ネタを書くなら書くで、具体的に書いてほしい」

と、私の意見にころりと同意してくれ、大いに盛り上がりました。

   ガクチカでは、定番ネタであれ、ユニークネタであれ、自己PRは外しましょう。というか、「外せ」(命令形)。

   ガクチカに自己PRを入れる話、就活マニュアル本ではそこそこあります。が、大学で、そうした指導をしているところは少数派。にもかかわらず、どの大学でも、このガクチカに自己PRを入れる学生が続出、結構な確率で落ちることになります。

   なお、「何をどう具体的に書けばいいのか」という話は、2016年4月25日付の当コラムで書いていますのでそちらをご参考にどうぞ。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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