労使ともリスクばかり気にして
処方箋としては、既存の正社員全体の賃金制度、人事制度も含めて抜本的に刷新する以外にはない。具体的に言うと、勤続年数に応じた職能給から、担当できる業務内容により賃金を決める職務給への切り替えである。それなら3人はそれぞれ現在のスキルに応じた処遇に収まり、今後の成長に沿って上下していけばいいから、年齢なんて気にする必要は無くなる。
ちょっと想像するだけでも、そうした改革のメリットはいろいろと思いつくはずだ。企業からすれば、多様な人材を即戦力で採用できるメリットがあるし、学生からすれば、従来の、基準の曖昧なポテンシャル採用から、自分が何をどう努力すればいいのか分かりやすい基準が示されるというメリットがある。
ついでにいうと、中高年フリーター問題も高学歴フリーター問題も、上記の例の通り問題の根っこは同じである。新卒一括採用の見直しが進めば、それらの問題もかなり改善が進むに違いない。
とはいえ、既存の賃金の見直しにつながりかねないことから、連合は上記のような処方箋にはとりあえず反対するだろう。経団連も今のところは年功賃金の見直しには反対のスタンスだ。
恐らく、現状のまま経団連あたりに申し入れたところで、「卒業後3年以内は『新卒』としてエントリーさせるように」というガイドラインが出される程度でお茶を濁されるだろう。
というわけで、新大臣にはぜひとも、頭の固い労使双方に改革のメリットを説明するところから手を付けていただきたい。筆者の経験上、経営者にせよ労組にせよ、上記のような改革に反対する人たちのほとんどはリスクばかりを気にかけ、それによって生じるメリットを理解していないからだ。
遠回りのように見えるかもしれないが、彼らにそうしたメリットを理解してもらうことが、「働き方改革」を実現するための一丁目一番地となるはずだ。(城繁幸)