ついに夏本番。とはいえ今年はカラ梅雨で、梅雨明けと言われてもあまりピンときませんでしたね。連日30度を超える気温が続き、家でも会社でもクーラーが欠かせない、という人も多いと思います。今回は、「会社でのクーラー使用」について、ご相談をもとに解説していきましょう。(文責:「フクロウを飼う弁護士」岩沙好幸)
事例=職場のクーラー禁止で体調崩す人が出ました
東日本大震災後、政府から出されていた節電要請を受けて、僕の勤めている会社では夏のクーラーの使用を制限していました。今年も例年通り、暑い日もクーラーは禁止されており、暑い中みんなで仕事をしていましたが、ついに熱中症で体調を崩す者が出ました。そもそも、節電要請があったからといって、それに必ず従わなければならないものなのでしょうか。節電も大切だとは思いますが、体調を崩すほど暑い中で仕事をさせても、問題はないのでしょうか?
弁護士回答=会社には労働者の健康を守る義務が
2011年の東日本大震災をきっかけとして、政府は、企業に対し、電力消費が多い夏や冬に、節電に協力するよう要請してきました。
節電要請に応じなかったとしても、罰則などは設けられていません。罰則を科すには法律の定めが必要ですが、節電要請に応じなかった場合に罰則を科すという内容の法律は存在しません。
夏や冬に一定の節電を強制されることは、企業にとって負担がとても重く、経済界からの強い反発も予想されることから、節電要請に応じなかった場合に罰則を科す内容の法律は作られなかったものと考えられます。
よって、節電要請は、あくまで、政府から企業に対する「お願い」に留まるものです。
では、暑すぎる職場環境は法に触れるのでしょうか。近年の暑い夏を考えると、暑さで労働者が体調を崩すということも十分に考えられます。
労働契約法という法律の第5条で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」とされており、使用者は、労働者が健康を崩さないように必要なことをなすべき義務を負っています。
体調を崩すほどでもない暑さの職場環境であればともかく、もし、あまりにも暑すぎる職場環境で労働者を働かせ、労働者が体調を崩すようなことがあれば、労働者は、使用者に対し損害賠償を請求できる可能性もあります
。労災がおりる可能性も
体調を崩したら労災はおりるのでしょうか。
労災保険給付を受けるためには、まず、労災認定される必要があります。労災認定は、仕事や職場環境が原因でけがをしたり、病気になったと認められる場合にされます。仕事中に、暑すぎる職場環境が原因で、熱中症などの病気になったと認められれば、労災認定され、労災保険が給付される可能性は高いですね。
しばらく暑い日が続くと思いますが、体調に気を付けて、仕事に励んでください。熱中症は、最悪の場合命にかかわることもあります。こまめに水分補給したり、涼しい場所に移動したりといった対策をとるようにし、くれぐれも無理をしないようにしてくださいね。
ポイント2点
●労働契約法(5条)で、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」とされており、使用者は、労働者が健康を崩さないように必要なことをする義務を負う
●暑すぎる職場環境が原因で、熱中症などの病気になったと認められれば、労災認定され、労災保険が給付される可能性は高い