再生医療は、いまが「旬」と思っている。少子高齢化社会の到来で成長分野として期待され、国も後押ししている分野だからだ。
とはいえ、医療関連銘柄は会社四季報の「医薬品」でみても63社と少なくない。そんな中で注目したのは、「精密機器」に分類されていた、JASDAQ市場に上場するジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J‐TEC)だった。
「規制緩和」の記事に注目
J‐TECは国内初の自家培養軟骨と自家培養表皮を再生医療製品として販売するベンチャー企業。2009年1月に日本初の再生医療製品として、自家培養表皮の「ジェイス」を発売。翌10年に富士フイルム(富士フイルムホールディングス傘下)が同社の第三者割当増資を引き受け、筆頭株主に。その後14年12月の払い込み完了により、子会社化した。
J‐TECの再生細胞医療製品「ジェイス」は、患者の皮膚から切手大の皮膚を切り取って培養し、3週間ほどかけて畳1畳分ほどの大きさにした表皮だという。
ただし、「ジェイス」の作成受注後に患者が亡くなって中止となる確率が毎年40%ほど。中止になった場合、細胞の受け取りから培養に至る経費はJ‐TECの持ち出しとなる。製品をつくるのに時間がかかり、完成前に患者が亡くなるという問題を抱えてきた。
気になりはじめていたものの思いきれずにいたとき、目にとまったのが2014年12月5日付の日本経済新聞の「新法で規制緩和」「再生医療 素早く審査」の記事だった。そこには、「IPS細胞などを使う再生医療を安全かつ速やかに広げるため、(2014年)11月下旬に法律ができた」とあった。
これなら「再生医療」が実現するスピードが早まると考え、再生医療に携わる企業にとって、大きな「買い」材料になると判断した。
加えて、J‐TEC株の購入の決め手になったのが、富士フイルムによる買収だ。買収時(2014年4月1日)の価格が1株1900円。その後の14年12月15日にJ‐TEC株を1455円で100株、初めて買った。「少なくとも買収時の価格は上回るだろう」と予想し、高値が付くと読んだ。少し長期的に保有しようと考えていたこともある。
さらに、日本経済新聞(2015年3月31日付朝刊)には、「富士フイルムHDがセルラー・ダイナミクス・インターナショナル(CDI)を買収。それにより、富士フイルム(細胞が増殖するための素材)、CDI(IPS細胞の生産)とJ‐TEC(軟骨・皮膚の再生医療製品)の3社で、再生医療に必要な技術がひと通りそろう体制を敷いている」と、書かれていた。
この報道に、富士フイルムHDの再生医療への並々ならぬ力の入れ具合を感じたし、「J‐TEC」の成長が期待できるとも思った。
2015年の1年を通して、株価が下がれば買い増し、上がれば利食い売りを繰り返した。
1年前倒しで黒字転換見込み
J‐TECは、2017年3月期の黒字転換が見込まれ「大化け」する期待がある銘柄だと思っている。2016年4月27日の引け後の決算発表では、今期(17年3月期)の見通しを500万円の黒字と発表。これまでの赤字予想から、1年前倒しで黒字達成を見込んでいる。
翌4月28日は東京株式市場で買い殺到のため、しばらく値が付かなかった。しかも市場は、午後に日銀政策決定会合で政策維持が決まり、発表されたことで失望売りとなり、日経平均株価が前日比624円安の1万6666円と最悪の状況。そんな中でこの日の高値は230円高の1580円、終値は120円高の1470円だったのだから、つい口元が緩んでしまった。
2016年5月19日引け後、J‐TECは小澤洋介社長の退任、富山化学工業で経営企画部長を務めていた比留間愛一郎氏の後任就任、また減資による累積損相殺を発表した。週明けの5月23日の株価は1478円と、前日(20日)比44円高に上昇した。
7月29日現在の株価は、1235円。利益確保の、次のターゲットは2016年3月の1598円、2015年5月の1650円、富士フイルムの取得価格1900円と続く。
ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング(J‐TEC)
2016年7月21日現在 600株保有 平均取得価格1347円
年初来高値 2016/03/08 1598.円
年初来安値 2016/01/21 1024.円