なりたい自分になれなくても 事件に思う「夢」実現教育の是非

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一つの遠因がここにある

   相模原事件の容疑者ほどでないにしても、多くの人が抱えるこのような小さないらだちは、いったいどこから来るのでしょうか。

   私は、「夢」の実現を強調するキャリア教育にその遠因の一つがある、と考えます。

   2000年代前半から日本では小中高、そして大学でキャリア教育が展開されるようになりました。小中高では、「夢を実現しよう、そのための進路を選択しよう」と「夢」がやたらと強調されます。確かに、早いうちから進路(職業)を意識させる、という点では効果があります。

   一方、「夢」を特に意識しない高校生・大学生は今も昔も一定数います。いや、相当多い、と言っていいでしょう。また、「夢」といっても、職業に結びついたものとはかぎりません。「幸せになりたい」「お金を稼ぎたい」など生活に結びついたものだってあります。

   なのに、どうも2000年代前半から現在に至るまで、日本の教育現場では、前者の「職業に結びついたもの」しか「夢」と扱われません。この「夢」実現キャリア教育の副作用が小さないらだち(本当の自分の居場所はここではない)につながっているのではないでしょうか。

   なりたい自分になれていない、としても、仕事は仕事として割り切る――そんなことも大事なのではないでしょうか。報道されている相模原事件の容疑者のキャリアから、ふとそんなことを考えた次第です。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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