社会に出て人間関係が広がると、冠婚葬祭に参会する機会も増えるもの。中でも「葬」については、同僚の家族や取引先の社員など、日ごろそれほど親しくない関係者でも告別式には駆けつけた、という経験が一度や二度はあるのではないか。
それが世間の常識、葬儀の不文律なのかと思っていたら、新入社員から敢然と疑問の声が上がった。「デートの約束を潰したくないからお参りに行きたくない!」という。
なぜ知らない人の会葬に?
「顔も分からない社員の告別式、新入社員は参列しなくてもよいか。」という、あまりにストレートなタイトルのトピックが立てられたのはQ&Aサイト「教えて!goo」だ(2016年7月7日)。
投稿者はこの4月に入社したばかりの新人。このほど別の支店に勤務している社員Aさんが亡くなり、告別式に出るかどうか社員用グループウェアで問い合わせが来ているという。
ほぼ全員が「参列します」と回答しているそうだが、投稿者は「告別式の日は日曜日ということもありデートの約束を入れてしまっています」。
「正直な話、Aさんとは話したこともなければ顔も分かりません。なにより、告別式で大切なデートの予定を潰したくはありません」
と正直に打ち明ける。
「こういった場合、嫌でも参列するべきなのでしょうか? 断る場合はどういった文章が良いでしょうか?」
と、知恵を求めた。
お陰という部分があるかもしれず
回答者からは、常識論が。
「余程のことがないかぎり参列すべきだと思います。自分なら参列します。告別式が無理なら通夜でもいいです。顔出したほうがいいですよ」
「モチロン、個人の意思の問題ですから、どうしても嫌なら、参加しなくて良いですよ。でも、世間は『ほぼ全員が参列します』で、多分、ソチラが正解なんでしょう」
など、「出席しておくべし」とのアドバイスが次々と寄せられた。
「それが社会の常識だから」という理由にとどまらず、
「例え面識が全く無くとも、同じ会社にお世話になった人で、貴方が入社3ヶ月位でも、此れは縁だと想います。余程の予定が無ければ、参列を勧めます。此れからも何度かお葬式に行く事も有ると想うので、勉強の為にも参列された方が良いでしょう」
「同じ会社で働き、会社を愛した方で、現在、質問者さんが働けているのは、もしかするとAさんのお陰と言う部分があるかも知れず、全く無縁と言うことは、まずありません。また、そのAさんを支えてくれたご遺族に、同じ会社で働く者として、『ありがとう。気を落とさないで頑張って!』と言う気持ちは持てませんか?」
と、「縁」や「お陰」などの言葉で会葬の意義を説く書き込みもあった。
こうした親身の説得を受け、投稿者からは後日、
「今回の告別式には社会勉強だと思い参列させていただきました。結果、行って良かったと思います。本当にありがとうございました」
との報告が。
驚くばかりに後味のよい結果がもたらされたようだ。(MM)