カレーだって10円玉いくつかで
若いみなさんはご存じないでしょうが、僕が在学していたころの大学は学生運動が盛んで、僕もデモを見に行ったりしたものです。しかし、普段は本を読んだり、自転車を飛ばして友だちの下宿に行って議論を交わしたり、市電に乗って京都の街をめぐったり、たまに仲間とギョーザを食べて焼酎を飲んだりといった学生生活ですから、それほどお金がかかるわけではありませんでした。学生食堂のカレーだって10円玉いくつかで食べられたのではなかったでしょうか。
ところが。
計算上は、1日500円は使えるわけですから十分に余裕があるはず。なのに、なぜか仕送りが振り込まれる3日も4日も前に、銀行の残高が3000円ぐらいになることがしばしばあったのです。そこまで減ると、さすがに心細くなります。2回生になると、先輩の世話で家庭教師や塾の講師などのアルバイトをするようになりました。
当時、物価が年に5%以上も上がり、仕送りや奨学金はそのままでしたから、徐々に苦しくなるのは当たり前ではあったのですが、それにしてもお金が減るのがはやすぎます。
いったい僕は何にお金を使っていたのでしょうか。(出口治明)