数字押しつけ上司には逆らうな それで呪縛から解放されるのだから(江上剛)

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   「チャレンジしろ!」と期末の数日で100億円も200億円も売上伸ばせと恫喝するトップが君臨していたのが、日本の経済界を代表する会社だったなんて、どんな穴を掘って身を隠したらいいんだろうと思うほど日本人として恥ずかしい。

旧日本軍の員数合わせ

   いつから日本企業の経営者はこんなに数字にこだわるようになったのだろうか。数字偏執狂(パラノイア)のトップばかりでうんざりする。そんなトップには員数合わせで対処してやればいい。とにかくつじつま、数字があっていればいいってことだ。

   昔、評論家の山本七平さんがある本に書いていたけれど、旧日本軍では員数合わせがまかり通っていた。戦地へ戦車100台送れということになったら、取りあえず戦車ならなんでも集めて送る。しかし戦地には届かない。途中で輸送船に沈められたり、敵に破壊されたりするからだ。なんとか数台の戦車が届いても故障で役に立たない。

   しかし大本営という本部ではちゃんと戦地に戦車100台送ったことになっている。まさに机上の空論だ。これで戦争に勝てっていう方が無理なのだ。これが帳面上だけで数字を合わせる員数合わせだ。

   この員数合わせの数字を見て、大本営のトップは、「よしよし」と満足していた。だから戦争にこっぴどく負けた時、あんなに戦車を送ったのになぜ負けた、兵隊が悪いと言って自分の責任を認めようとしなかった。

江上 剛
江上 剛(えがみ・ごう)
作家。1954年兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、第一勧業銀行(現・みずほ銀行)入行。同行築地支店長などを務める。2002年『非情銀行』で作家としてデビュー。03年に銀行を退職。『不当買収』『企業戦士』『小説 金融庁』など経済小説を数多く発表する。ビジネス書も手がけ、近著に『会社という病』(講談社+α新書)がある。
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