風通しが徐々に悪化する
挨拶は、組織における「不正リスクのバロメーター」ともいえるだろう。その理由は、挨拶はコミュニケーションの出発点であり、挨拶ができていない組織では「風通し」が徐々に悪化していくためだ。
風通しの悪い組織では、上司と部下のコミュニケーションが不十分になり、誤解が生じたり、問題の報告が滞ったりする。また、社員がお互いの仕事に関心を払いにくくなる。そのような環境の下では、以下のような「不正のトライアングル」の3要素が生じやすくなるだろう。
・組織の中で孤立し、プレッシャーや不満を抱え込む社員が増えるリスクが高まる
・お互いの仕事への無関心から、チェックが甘くなり、任せきりの状態が生じやすい
・「会社が悪い」「上司が悪い」などと身勝手な正当化をしてしまう心理状態になりやすい
逆に、元気な挨拶は、組織の活性化や業績向上をもたらす起爆剤になる。組織コンサルタントのデビッド・シロタ他は、その著書『熱狂する社員』(英治出版)の中で、企業が社員のモチベーションを向上させ活力ある職場をつくるためには、「公平感」「達成感」「連帯感」の3要素が必要であるとしている。コミュニケーションは、これら3つの要素を高めるための潤滑油として機能する。
「公平感」は、上司がすべての部下と分け隔てなく接して、部下の希望を理解し、自分の考えや評価を率直に伝えることにより生まれる。
「達成感」は、お互い常に相手に関心を持ち、相手のいい点は小さなことでも褒めたり、認めたり、感謝したりすることにより感じることができる。
「連帯感」は、まさに日頃のコミュニケーションの賜物である。朝の挨拶を起点として、お互いに声を掛け合う。困っている相手には自然と助けの手を差し伸べる。時には不適切な言葉や振る舞いをきっちり指摘し合うという厳しい連帯感も必要だ。
挨拶のポイントは、「あ」かるく、「い」つも、「さ」きに、「つ」づける、の4つだと言われる。新卒社員が職場の雰囲気に「染まってしまう」前に、上司や先輩が率先していいお手本を示し続けよう!(甘粕潔)