職場でのコミュニケーションや人間関係を良好に保てる人が仕事のできる一流の人だ。だから、しっかりした企業ほど幹部に対する「傾聴訓練」を施している。部下の話をしっかりとよく「きく」ための基礎的な訓練だ。
話せる上司になるには
耳にも三つある。
一つ目は「聞く」耳。
二つ目は「訊く」耳。
三つ目は「聴く」耳。
三流の人の耳は「聞く」耳だ。耳が頭の両側に門のようについているだけだ。言葉を音として聞いているだけかもしれない。いくら話しても心が通いあわない。
二流の人の耳は「訊く」耳だ。自分が知りたいことだけを聞いて、部下の話には耳を傾けない。
一流の仕事ができる人の耳は「聴く」耳だ。耳の中に十四の心を入れて(「聴」という字の成り立ちをみると、耳へんに十四の心と書く)、相手の目を見て、部下の話をしっかりと受けとめ、彼らの感情の動きを把握している。だから、話せる上司のいる職場には元気な部下が多いのだ。
正しい傾聴法とは、部下の話す内容を分かるだけでなく、それに付随する感情を理解する態度である。さらに、相手の置かれている状況を把握し、話す時の表情や態度にまで注意を払うことも「聴く」に含まれる。
これが傾聴の極意だ。
耳は二つ、口は一つ
上司がそのようにして部下の話に耳を傾けると、垣根なく話せる雰囲気ができる。話せる雰囲気ができると、スムーズに「報告、連絡、相談」ができる。いわゆる「ホウ・レン・ソウ」が活発になる。するとお互いにサポートし合える職場環境ができる。ストレスが軽減される――このようによい連鎖が生まれる。
部下の心理にもよい影響が出る。上司に耳を傾けて聴いてもらえると、自分が理解してもらえたとうれしく感じる。カタルシス効果で気持ちがすっきりし、前向きになる。あるいは自分の心の問題点に自分で気づくことができる。
このように、傾聴によって上司と部下の信頼関係が築かれる。
むかしから「耳は二つ、口は一つ」という。
仕事のできる上司ほど、「うん、そうだね」と肯定的なあいづちをはさみながら話を聞いてくれる。きちんと聞いて、自分の判断を示す。私たちには二つの耳と一つの口が備わっている。「二つ聞いて一つ話すようにすると、よい人間関係が築ける」といわれている。
どうだろう、今日から実践してみては。(佐藤隆)