このたび『やってはいけない! 職場の作法 コミュニケーション・マナーから考える』(ちくま新書)を出版しました。雑談力、ツールの使い分け、会議の掟、お詫びの鉄則など、社内に溶け込み、存在感を示していくためのコミュニケーションの基本を学べる1冊ですが、とくに、仕事上のコミュニケーションとして大切な、「疎遠になりがち」な人に対する「メンテナンス」について、その目的意識と方法を紹介してみました。
「どんな人?」と聞かれたときに
メンテナンスとは、誰かとつながった状態を保つために「最近はどうしている?」と様子を伺うようなことなどを指します。そうしたコミュニケーションにどのような意味があるのでしょうか? メンテナンスは、レピュテーション(評判)に対する効果的な対策になるから重要なのです。
仕事をしていると、何らかのきっかけで誰かが「○○さんってどんな人?」「あの人ってどういうことができるの?」と、その人に対するレピュテーションを周りの人に取りに来ることがあります。そんな時、その人が日頃から周囲に対してきちんとメンテナンスをしていると、「すごく気が利く人だよ」「周りのことをいつも考えてくれるね」などと、ポジティブなことを言ってくれる可能性が高くなります。結果として、自分の知らないところでレピュテーションが上がっていき、それが仕事という報酬になって返ってくるケースが出てきます。
ただ、メンテナンスをする以上、継続することが重要。数か月に一度くらいのペースで会っておくのが本来は理想です。少なくとも、忙しいからと疎遠になりがちな人に対して戦略的にメールを1本送っておく。あるいは電話で会話をしてみること。これをメンテナンスと定義してみました。
2回以上会った人を大切に
不思議なもので、人間は初めて会う人はたくさんいるのに、そこから次につながる、つまり二度会う人はかなり絞られてくると思います。皆さんも、思い当たる節があるのではないでしょうか。おそらく1回会ったことのある人が100人いたとしたら、その後、2回目も会うのはそのうちの数人、ひょっとすると1~2人くらいに絞られるかもしれません。
ゆえに2回以上会ったことのある人はとりわけ大事にしたいもの。と思いながら、実際には忙しい日々にかまけて、会う機会まではどうしてもつくれなかったりします。やがて記憶は薄れて、相手にとっても自分の存在は消えてしまう。仮に、そのタイミングで「○○さんってどんな人?」と誰かに聞かれたら、「会ったことあるけど、よく覚えていない」くらいで、レピュテーションとして意味をなさないもので終わることでしょう。
当方も偶然に会った人と2回目に会う確率は、相当に低いものがあります。そんな2回以上会った人でも時間が経過すれば記憶は消えていきます。ところが何気なく、
「この間、サイトで記事をみました。素敵な内容でした。そういえば、お元気ですか」
とメールが送られてくれば、記憶はよみがえり、さらに好印象が加えられることでしょう。あるいは、「ご活躍のことと存じます。最近はどのような分野にお取り組みでしょうか?」と、相手の状況がわからなくても関心を示す内容でメールが送られてくれば、返信のやりとりが行われて、新たな親密さが生まれることになります。
こうしてメンテナスを受けた人について、別の誰かに「○○さんってどんな人?」と聞かれたことがありますが、好印象からプラスのコメントをしたのは当然のことかもしれません。だからこそ、2回以上会った人に対しては、(可能な範囲での)メンテナンスをする意識を日常的に持っていただきたいと思います。
仕事をしていると、目的のある人から優先的に接触するため、目的があいまいな人への連絡はつい後回しになってしまうものです。そして、気がつくと会わないまま時間がかなり過ぎてしまい、結局「二度と会わない人」になってしまいがちです。もちろん、「それでもよし」と割り切って捨てられる相手なら話は別ですが、今後の仕事の可能性を考えた時に、何か少しでも気になる人であれば、さりげなくメンテナンスをしておきましょう。
そういった形でコミュニケーションをしていくことによって、お互いの良好な関係が続き、仕事によい影響をもたらしてくれる機会もきっと訪れるはずです。(高城幸司)