絡んだ糸は科学だけではほどけない 「ノニストレス」に気づいてこそ

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「のに」を連発していないか

   筆者は、総合心理教育研究所、カナダストレス研究所を通じ30年以上にわたりストレスサイエンスを調査研究している。

   ストレスに関する理論の源流はカナダストレス研究所にさかのぼる。筆者と同研究所のアール博士とで開発したTHQストレス診断は、日本でストレスチェックが義務化されたのに伴い、多くの企業や官公庁で活用されている。

   個別的なコーピング処方箋では、こちらのほうが最先端だと自負している。いくらストレス科学が進んで「コルチゾール」や「セロトニン」の働きが解明されても、それで直ちにストレスが撲滅されるわけではない。自分の体や脳の中にそれらの物質が出ているかどうか知ろうとしても、分かるはずがない。

   なにより重要な「解」は、己に気づくことある。

   一番いい「気づきの方法」は「ノニストレス」が出ていないか、チェックしてみることだ。ノニストレスとは、

「私はこんなにがんばっているのに......」
「あの時、助けてあげたのに......」

などのように、「のに」という語尾で自分の本意が相手に理解してもらえない不満を表現するストレスをいう。

   こうしたストレスに気づかないでいると、「私は優秀なのに......。なぜ出世しないのだ?」なんていうお先真っ暗な気持ちになる。知らずしらずのうちに自分が自己中心的になっているという事実が把握できていないのである。

   ノニストレスに気づいたらすぐコーピングすると効果的だ。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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