社員の目標達成執念はどこから湧く いかんせんこの人が淡泊では

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「私の改善は不要」

   ほどなくT支店長は栄転し、交代したY支店長は行内きってのインテリとの評判も高い有名人。周囲の誰もが業績進展を確信しての着任でしたが、Y支店長の綿密な推進戦略に沿って毎期毎期いいところまでは行くものの、表彰には届かずの連続。

   一体何が足りないのか。前任のT支店長と比較し、S支店のFさんのことも考え合わせみると、支店のリーダーたる支店長の「目標を絶対に達成する」という強固な信念が、組織内への影響力の観点から何より重要なのではないか、と感じられたのでした。

   コンサルタントとして独立後間もない頃、同じようなことが企業の現場でも起きました。とある中堅IT商社の人事制度改訂のお手伝いをした時のことです。

   営業部隊の士気向上もみてほしいとの要望を受けて、社長が年度目標を発表した翌日に、営業スタッフ20名を対象として「本年度の目標は達成すると思いますか?」というアンケートを行いました。結果は、YESが9人、NOが11人。つまり、半数以上が目標を示された時点で「達成しない」と思っていたのです。

   それもむべなるかなと思ったのは、社長の目標発表があまりにアッサリしたものだったからです。銀行時代の経験から、営業チームの強化には、まず社長自らの意識改革が必要と感じた私は、「まずは社長の目標達成に対する執念を、社員にストレートに伝えましょう」と進言しました。が、社長からは「私の改善は不要。人事制度改訂に専念してくれ」と一蹴されてしまいました。1年後の結果は目標大幅未達でした。

   とある人事コンサルティング会社が会社員を対象に実施した「御社が掲げる目標について、あなたは達成できると思いますか?」というアンケートの回答で、YESと答えた人は約35%。さらにその理由をたずねると、最も多い約60%の人が「目標達成に対するトップの意思が強固であるから」と答えたのです。逆に「達成できると思わない」と答えた人は、その理由について「そもそも経営陣すら、何が何でも目標達成しようと思っていないようだから」が最多の回答となりました。やはり、トップの目標達成意欲と目標達成確率は完全リンクしていると痛感させられるところです。

   これらの経験から私が導き出した結論は、

「目標達成を信じて疑わないリーダーのもとでは、メンバーは組織の目標達成を信じ、組織は目標を達成する」

です。

   私が営業チームの強化の依頼をいただいた折には、まず社長にこの点をじっくりと説明し、社長の目標達成意欲をストレートにしつこく社員に伝えてもらうようにお願いします。それが着実な成果改善につながるのです。

   営業成績不振でお悩みの社長さん方のヒントになれば幸いです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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