この国が好きだから
このオート三輪の形状が、バングラデッシュではこんななのです(現地ではCNGと呼ばれています)。
まるで檻の中に閉じ込められているような乗り物。これに乗って、異常に密集したボロボロのビルの間の細い道を、世界最強クラスの渋滞に巻き込まれながら、排ガスをたらふく吸って進む中で、この国はやばいな、と思ったのでした。
案の定、バングラデシュに日本人の現地採用の仕事はほとんどなく、在住者は大手企業の駐在員か、JICAを中心としたボランティア。あとは、飲食店などを起業している人が少々。発展途上国ですが、その途上のスタートラインにまだ乗っていない感を感じました。
そんななか、現地で暮らす日本人の家で、JICAの隊員などさまざまな人たちが集まる食事会があったので、行ってみました。
なぜ、彼らはこの国に住んでいるのか。その疑問をぶつけてみようと思っていたのですが、直接聞く必要はありませんでした。
彼らは、この国が好きなのです。
治安が悪い、交通インフラは最悪、衛生面もひどい。でも、この国の人たちがたまらなく愛おしく、この国が少しでもいい方向に向かって行ってほしいと願っている、その感情から彼の地に滞在していることが、彼らの会話からひしひしと伝わってきました。
そのような人たちがテロによって命を落としてしまったこの事件に、私はひどく落胆しています。
実はその時、バングラデシュではデモが起こっており、午前中外出禁止令が出ていました。テレビを見ていると、CNGが客を乗せたまま横転させられたうえに、火を付けられている映像が繰り返し流れていました。
今回は、ISが犯行声明を出しており、2013年当時よりもさらにリスクが大きくなっていることが分かります。そんななか、それでもバングラデシュに踏みとどまって、この国をよくしようとしていた日本人、イタリア人、アメリカ人たちが犠牲になってしまったことが、非常に悲しいです。
何が原因なのか、どうすればこのようなことがなくなるのか。それを考えていかなくてはならないのですが、今は、犠牲者の方のご冥福をお祈りします。(森山たつを)