社訓という生き残りの知恵 変化のために邪魔になることも

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ブランドだけでは勝てない時代

   筆者が属している出版業界でも、中公新書で一時代を築いた中央公論社は倒産して、読売新聞社の傘下に入りました。昨今は、著者やタイトルで本を買う人がほとんどで、出版社のネームバリューで買う人は限られています。出版業界は、まだ日本語という非関税障壁に守られて、外国と勝負することはほとんどありません。が、他の多くの業界では国内外での厳しい競争にさらされています。

   10年前に私が訪米した時には、あちこちのホテルの部屋で日本製テレビが見られましたが、4月に2週間、5か所の訪問地を回った米国のホテルでは、ついぞ日本製テレビを見かけませんでした。ブランドだけでは技術と価格に勝てない、ということでしょう。

   シャープしかり。三菱自動車の問題も、根底には技術格差がありました。前回お話ししたように、技術による優勝劣敗があらゆる業界で起こっているいま、本来、取引実績とブランドで群を抜いている長寿企業が、経営要素の中でも技術を重視しているという戦略性は、さすがだと言えます。

   あなたが勤めている会社は、何によって他社との差別化ができているのでしょう。会社の今後の盛衰を占う大事な視点です。(浅田厚志)

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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