社訓という生き残りの知恵 変化のために邪魔になることも

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   若いビジネスマンには古くさい会社の象徴のように見える家訓、社是、社訓。成功長寿企業では、どのように扱われているのでしょうか。

   まず、有無を聞いたところ、「ある」と答えたのは256社、78%、「ない」は72社、22%でした。ほぼ5分の4の社にあるという結果になりました。これは明らかに長寿企業になるためのノウハウのひとつと言えます。

   さらに、あると答えた経営者に、それらを「破ったことがあるか」と尋ねたところ、「ある」は16%、「ない」は84%でした。すなわちアンケートを実施した企業の66%で「社訓などが存在し、かつそれを破ったことがない」という実態がわかりました。実直な企業が多いのですね。

非製造業には少ない社是、社訓

社訓を奉じる意義とは
社訓を奉じる意義とは

   このアンケートは、平均4代目の現役社長に尋ねていますので、3代目の経営はわかっているにしても、創業者や2代目が破ったことがあるか、ないかまで正確に把握して答えるのは難しいでしょう。しかし、「ない」と答えた以上、創業家の来歴にきずを残すような家訓破りはおよそなかったと解釈できます。善し悪しは別として、素晴らしい家風が引き継がれていると言えるでしょう。

   業種別に見ると、流通業の29%、非製造業の30%には社是のようなものがありませんでした。流通業、非製造業を除いた平均では85%にありました。このことから製造業のほうが多く、非製造業には少ないことがわかります。

   そこにはどのような考え方の違いがあるのでしょうか。

   流通業、非製造業には、一貫した経営理念や社是を大事にするよりも、時世の変化に対応するほうがより大事だと考えている会社があります。時代に合わせて、取扱商品を変えたり、販売方法を変えることのほうが、企業を長らえさせるために重要だということでしょう。そのためには、かえって社是や社訓が邪魔になることがある、と答えた経営者がおられました。

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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