2年かけて得たものがあるか
ところで、先ほどご紹介した『人文・社会科学系大学院生のキャリアを切り拓く:〈研究と就職〉をつなぐ実践』は、専門書ではありますが、エントリーシートの書き方などをまとめたマニュアル本的要素も含まれています。
院生にありがちな書き方の例を紹介したうえで改善例を示しています。例えば研究テーマを示すときは、
「専門外の人も理解できるよう、明確かつシンプルにポイントを整理しておきましょう。『専門が近しい人以外にはなかなか理解されないだろう』と思い込まずに、『自分の専門分野についてまったく知らない人の興味をそそるにはどのように伝えたらよいか』を重視してください」
と、きわめて具体的です。
私が企業の採用担当者に聞いて回ると、文系大学院卒だからといって特に不利な扱いにすることはない、とのことでした。ただし、年齢を気にする企業はあります。
「大学院生だから落とす、というわけではありません。ただ、2歳上でも学部卒と給料は同じです。その扱いで不満を持たないかどうか。それと、大学院に2年行ったことが、単なる逃げなのか、それとも得たものがあるのか、そこはきちんと聞きたいですね」
文系大学院生でも、わざわざ自分から不利と思い込まなくてもいいような気が、私はします。(石渡嶺司)