温厚部長か猛烈課長か、それが問題だ 職場の「確執」に悩んだときは

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   「ロミオとジュリエット効果」とは、恋愛において2人の間に障害があると、逆に2人の間の感情的結びつきが強化される、という現象を指します。心理学者のドリスコールによって提唱されました。今では、恋愛に限らず、何か障害があるとそれを乗り越えようとしてモラルが高まり、やる気がいっそう醸成されるような心理的現象を言います。

   うまくいっているように見える職場にも、思わぬストレスの種があります。職場の本質は今も昔も「競争の場」です。例として、A君31歳の転職のケースを見てみましょう。

2人からのプレッシャーが厳しく

上の「対決」に付き合うのも大変
上の「対決」に付き合うのも大変

   A君は営業職で、希望の会社への転職に成功しました。いわば順風満帆。しかし、配置された職場には厄介な問題が潜んでいました。将来の役員候補のポストを争っているらしいW部長派閥とX課長派閥が角を突きあわせていたのです。

   ある日「A君、食事でも行こうか」と温厚なW部長に誘われ、居酒屋で楽しい一夜を過ごしたら、翌日には、猛烈タイプのX課長の目つきが鋭くなっています。仕事はうまく進んでいるものの、2人の間に確執があり、互いに自己主張して譲りません。

   その狭間に放り込まれて、A君は、気が休まる時がありません。好ましく感じられるのは温厚なW部長、しかし直属の上司はX課長。そのうちにA君を自派閥に取り込もうとする2人からのプレッシャーが厳しくなり、出社するのもだんだん気が重くなってきました。 思い悩んでいたら、「最近転職してきたA君は新型うつらしい」という噂まで聞こえてきました。いったいどうしたらいいのか――A君はハムレットのような気持ちで過ごしています。

確執ストレスを乗り切るには

   こんな状況に置かれた部下の行動は、5つのタイプに分かれます。

   (1)自己中心的になり、部課長の陰口を言って憂さを晴らすタイプ

   (2)自分より上司の言いなりになるタイプ

   (3)自分も両方の上司も大切にし、うまく適応しようとするタイプ

   (4)面従腹背でうまく切り抜けるタイプ

   (5)どちらかの上司につくタイプ

   長年メンタルヘルスの現場にかかわってきた経験からの独断をお許しいただければ、このような状況でうまくいくのは(3)のタイプの人です。というわけで、こうした職場ストレスを生き抜く「部下の戦法」を考えてみました。

   (1)うまくいく人は、職場のストレスがあっても、ロミオとジュリエット効果を生み出す「障害」と考え、「やる気」になる。自分が相手を嫌いだと感じると相手も自分のことをよく思わないので、どちらか、ではなく、部長も課長も両方好きになるよう努力する。

   (2)うまくいく人は、上司の指示命令にも、まったくの言いなりになるのではなく、提案をしたり、代替案をだしたり、積極的に行動してよりよい結果が出るよう努力する。

   (3)うまくいく人は、かならずしも「八方美人」や「善人」ではなく、自分自身の人生観や哲学を持ちつつ相手の感情も大事にし、人と和して、ごまかさず、しっかりと自分の率直な気持ちを伝えていく。

   (4)うまくいく人は、理性的で中庸の道を行く。どちらか一方に偏らずバランスを保つことができる。

   (5)うまくいく人は、志を持っている。「己」をしっかりわきまえており、部長に付和雷同したり、課長に右顧左眄(うこさべん)したりない。何のためにその職場で働くのか、人に仕えるとはどういうことか、それが明確になっている。自分の座標軸があるので不必要に悩まない。

   職場で人事の確執に悩まされている方は、参考になさってみてはいかがでしょうか。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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