今回のテーマは「2018年卒の就活時期」です。
本連載でも何度か紹介した就活時期変更。新たな動きが出てきましたので改めてお知らせします。同じ話で飽きた、という声もあるでしょうが、事情を知らない方のために、まず経緯を説明します。
2015年卒までは「広報解禁3年生の12月・選考解禁4年生の4月」でした。そんなに早くては学業への妨げになる、ということで、16年卒は「広報解禁3年生の3月・選考解禁4年生の8月」へと変更になりました。ただし、変更を決めたのは日本経団連で、法的拘束力はありません。
変更した年に問題が続出
これで解決、と思いきや、選考解禁前に実質的な内々定を出す企業が続出。文系学生は、早い段階で内々定を得ても本命の大手企業の選考時期が遅く、就活を終えられません。例年なら、失敗した学生の就活期間が長びくのが普通でしたが、16年卒は成功した学生さえも延々と長期化する弊害が生まれました。
さらに、理工系学生の学業を阻害することにもなってしまいました。彼らは4年生の7月ごろから卒業研究準備を始めます。学業と就活の両立を強いられ、日程の「後ろ倒し」の目的であったはずの「学業への妨げ」が皮肉にも理工系学生について顕著になりました。
大学の現場職員からも「これなら前のほうがましだった」と批判の声があがるようになりました。企業側も、内々定を出しても、学生が本当に来るかどうかわからない、ということで苦労しました。
学生・大学・企業、それぞれが不満をくすぶらせる中、2015年11月、17年卒の就活時期について経団連が「広報解禁3年生の3月・選考解禁4年生の6月」へと変更を決めました。
迎えた今年の17年卒採用。「3月・6月」は、昨年ほどの不評は買いませんでした。ただし、好評だった、というわけでもありません。
まず、大学側は16年卒採用の大混乱を受けて、学生に早めに準備するよう言い続けていました。それで、モチベーションが高い学生は早期に取り組むようになりました。
企業側でも、大企業は5月ごろに実質的な選考を開始、選考解禁の6月上旬にかけて内定を出すことで足なみが揃いました。苦労した(あるいは、現在もしている)のは中小企業や知名度の低い企業です。急な時期変更に対応できず、大手企業よりも採用時期が遅くなる、逆転現象が生まれてしまいました。対応できた企業でも、16年卒に引き続き、内定辞退に苦しんでいます。
学生の相当数は3月前後には就活に着手。期間が短くなった分だけ、企業・業界研究が不十分なまま選考を迎えてしまった学生もいます。そうした学生は、志望企業・職種への理解が足りないと判断されて就活がうまくいかなかったり、たとえ就職しても「自分の考えていた仕事と違う」と早期退職しやすいのではないか、と危惧されています。再変更が消えたのは地震の影響か
ここから本題です。2018年卒の就活時期はどうなるのか。そもそも2015年11月の変更時点で、
「『3月・6月』はあくまでも一時的措置。18年卒でまた『12月・4月』に戻す」
とのうわさが立っていました。私も春ごろまではそうなるだろう、と見ていました。
ところが、4月に熊本地震が発生します。東日本大震災ほど学生に大きな影響を与えたわけではありませんが、この震災への対応として、被災学生に救済措置(選考時期を別に用意するなど)を講じる企業が、金融などに出ました。そうした動きを見つつ、経団連は、就活時期については7月に調査を開始、10月ごろに発表する、と決めました。
調査発表が10月となると、「12月・4月」への変更はほぼ絶望的。なぜなら、東京ビッグサイトやインテックス大阪、福岡ドームなど合同説明会が開催できる規模の大型会場は、予約が間に合わないからです。警察・消防への届け出などまで考えれば、就活時期の変更は、遅くとも広報解禁の半年前までには決定されている必要があります。
経団連の調査時期の発表は、実質的には「18年卒は2016年のスケジュールどおり」との宣言に近い――採用・キャリア関係者の多くはそう受け取っています。
「12月・4月」への再変更が消えたのは、熊本地震影響説のほかに、経団連のメンツから、と見る説もあります。つまり、わずか2年で「12月・4月」に戻すとなると、さんざん議論をして「3月・8月」に変更したのはいったい何だったのか、と批判が集中しそうです。変えた意味がないどころか、かえって混乱を招いたと見方が定まると、変更を進めた側のメンツは丸つぶれ。とうてい受け入れがたいだろうという説です。
幸いにして「3月・6月」は「3月・8月」ほどひどい不評ではありません。メンツを守るためにも、再変更を潰した......真偽は不明ですが、ありそうな話ではあります。
一方、「まだ18年卒の再変更はあり得る」と話す関係者もいます。
「21年卒が6月選考解禁のままだと、採用に出遅れた無名企業はオリンピックの影響をまともに受けてしまう。それを回避するためには18年卒から段階的に再変更の必要がある」
「18年卒は2月広報解禁、6月選考解禁とする。2月は試験があるから、1日ではなく16日解禁とする。そうしておいて、19年卒か20年卒で『12月・4月』に戻す」
なかなかうがった見方です。
このままでは21年卒が東京オリンピックの影響を受ける、というのはその通りです。だからと言って、2月16日広報解禁はどうでしょうか。確かに学生たちの企業・業界研究を十分なものにするために、少しでも就活期間を長くとることは理にかなっています。ただ、16日解禁というのは、いくら後期試験の影響を避けるためと言っても、やはり中途半端すぎます。この説を唱える関係者は少数派です。
当面18年卒も「3月・6月」が維持される見通しが強まってきました。
では、18年卒となる現3年生はどう対応すればいいでしょうか。
広報解禁が3月といっても、1日セミナーを含むインターンシップ(通称・インターン)は夏休みから秋・冬、3年生の2月にかけて多数展開されます。毎月必ず、とまでは言いませんが、できるだけ多くの企業のインターンに参加することで、視野を広げていく必要があるでしょう。(石渡嶺司)