業績ジリ貧招いた後継社長の勘違い 「たとえ死すとも無借金経営」

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引っ掛かった新社長の一言

「社長を継いですぐリーマンショックがあって、つくづく悪い時期に父の跡を継いだものだと思ったよ。大打撃を被り、以降、業績はジリ貧。3年前に父が亡くなってからは孤立無援。周囲には、景気回復だなんだと威勢のいい企業もあるのに、うちはダメ。自分の無力さに落胆するばかりさ。このままではさすがにもう限界だね」

   私は彼が社長に就任した直後、プライベートで少しだけ相談に乗ったことがあります。その折の主なテーマは、いわゆる社長の心得やマネジメントのポイントについてでしたが、ひとつ引っ掛かったことがありました。

   それは、「父が無借金状態に戻して、社長を譲ってくれたのがありがたい」という彼の一言でした。

   その時見せられたM社の決算書によると、利益こそほとんど出ていませんでしたが、長年蓄積された内部留保は、企業規模に比してかなり大きなものがありました。すなわち、私の銀行員経験に則って見るなら、当時のM社は銀行が喜んでお金を貸したい相手でした。

   それでもなお先代社長が無借金状態で会社を引き渡したということは、どういうことなのか。先代は晩年、投資にきわめて消極的になっていたのではないか、と容易に想像されたのです。中小企業庁の調査では、40~50代の経営者と70代以上の経営者を比較すると、積極的な投資を考える経営者は3分の2以下に減ってしまうというデータがあります。

   私が危ぶんだのは、T社長は先代の傍にいてその投資スタンスを当然のことと受けとめ、銀行からの借入を悪いことと捉えているのではないか、経営者として投資ということを誤って理解していないかという点でした。

   実は、すでに出来上がった会社を引き継ぐ二代目、三代目経営者にとって大切なことは、投資に対する正しい理解です。企業は投資により生まれ、正しい投資があって初めて発展軌道に乗るものだからです。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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