前回までの3回で、成功長寿企業の経営継承の仕方についてまとめてみました。いかに、盤石な経営基盤をもっていても、継承につまずいたら、またたくまに経営は悪化してしまうことがわかりました。
さて、今回からは、長寿企業の経営者はどのような考え方をしているのか、何を大事にしてきたのか、という経営の仕方について語ってまいります。ぜひ、お勤めの会社と比較しながら、読んでみてください。
どの会社にも、良い点と良くない点があります。その中でも、成功長寿企業は、非長寿企業に比べて、良い点が多いことがわかっていただければと願います。
経営者は何を重要とするか
長寿企業の経営者に以下の7つの質問をしました。経営危機の内容、経営危機をいかに克服したか、なぜ長期の経営ができたか、よい経営には何が必要か、よい経営の継承とは、経営権と株式について、そして経営者の驕りをいかに防いできたかです。
それらの答えを筆者が考える経営の6要素、ヒト、モノ、カネ、技術、情報、哲学に分類したところ、以下のような割合になりました。
ヒト:4.0
モノ:3.8
カネ:3.9
技術:4.1
情報:3.3
哲学:3.9
これは各経営者がいままでの経営判断の中で、何を重要と考えてきたかを分類、整理したものです。
驚いたことに、技術をもっとも重要としていました。技術は、行った経営者アンケートの35番「後継者として先代から受け継ぐ重要なこと」の回答でも、6項目中第2位になりました。経営の重大要素は「ヒト、モノ、カネ」と言われた久しかった時代から、変化が起きているようです。
コカ・コーラの成功も技術力が裏打ち
マーケットにおいても企業間においても優勝劣敗や下克上が激しさを増し、かつてのように、取引実績や人間関係、ブランドだけで注文を取ることが難しくなっています。
長寿企業の経営者は、そのことを敏感に感じとり、「技術」「創意工夫」で競合他社との差別化を図らねばならないと考えています。
技術といっても製造業に限りません。飲食業でも、調理の技術や顧客接待の技術で、独自のノウハウをもっている企業があります。営業では、販促や販売の技術というのもあります。
今年4月、米国コカ・コーラ社を訪ねて歴史ヒアリングをしました。コカ・コーラの製法は門外不出。国連加盟国よりも多い数の国で売られているコカ・コーラ成功の秘訣を直接、聞いたところ、一つにはその味だといいます。民族によって甘みを感じる原料が違うので、世界中で同じ原料を使っているわけではないとのこと。つまり成功のかぎは、世界のそれぞれの国でおいしく、安定した味の飲料を提供するために開発した技術力にあるということです。アトランタの本社にある、各国のコーラの飲み比べコーナーでは、確かに味の違いを体験することができました。
その次がコカ・コーラというブランド。英語では「OK」の次によく知られている単語だそうです。
世界でもっとも愛されている単品商品とも言えるコカ・コーラ。その130年の歴史に学ぶことはたくさんあるようです。
さて、あなたの会社はいかがですか。(浅田厚志)