「テフロン大統領」に学ぶべきは、ピンチにユーモアを忘れぬ余裕

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   ロナルド・ウイルソン・レーガンは、アメリカ合衆国の第40代大統領。映画俳優からの政界転身で、しかも離婚歴があって、史上最年長の69歳で大統領に当選する。就任まもない1981年3月30日には、ワシントンで銃撃され弾丸を摘出する緊急手術を受けたが、一命を取り留め、そこから不死鳥のように復活した。

傷つきにくく焦げ付かない

傷つきにくく、焦げつかない
傷つきにくく、焦げつかない

   暗殺犯の凶弾を受けて運ばれた救急ベッドの上で、心配するナースに「(妻の)ナンシーは、君と僕のことを疑っていないだろうね」とユーモアを忘れなかったという。プレッシャーやストレスの多い政治の世界にあって、レーガンはタフで汚れが付きにくい「テフロン加工のような大統領」と呼ばれていたと聞いている。

   多少ゴシゴシやっても傷つきにくく、火にかけっぱなしでも焦げつかないテフロン加工のフライパンにたとえられるようなハートの持ち主。繊細で傷つけられることの多い人々には、うらやましく思えるのではないだろうか。

   毎日、職場で「あほ」とか、「バカ」とか、「ポンコツ」とか、「給料泥棒」とか真顔で言われたら、多くの人は出社がつらくなってくる。

   そんなひどい言葉でなくても、ハラスメントすれすれの嫌味を言われただけで「心がへこむ」人が少なくないのが現代。「会社に行きたくない。でも、やめてどうやって生きていけるというのか」と悲鳴をあげたくなる。

心のワクチンを試してみよう

   筆者は、心がへこみ、出社するのがつらくなった時に効く「心のストレスワクチン」を考えてみた。ストレスワクチンとは、ストレスへの耐性を上げる方法だ。以下の5つを試してみてほしい。

(1)笑顔をつくろう

   遺伝子工学的に見て、心身の活力スイッチが入るのは、笑顔、前向き、明るい心によってだそうだ。心がへこんだら、無理にでも笑顔をつくって心をふっくらさせよう。

(2)「悩みスイッチオフ」と唱えよう

   嫌なことは続くもの。メンタル不調が続くのは、気持ちの切り替えができない時だ。たとえ心の中の「悩みスイッチ」が入っていたとしても、夜になったら「悩みスイッチオフ」と声に出して言ってみよう。

(3)カウンセラー的友と話そう

   ストレスについて話せる友人がいるといい。つらい時は、そういう友に話を聞いてもらおう。「カウンセラー的」というのは、アドバイスを与えてくれるというより、話をじっくり聞いてくれる人という意味。ただし専門のカウンセラーとは違って友人には守秘義務がないから、個人情報を出す時は注意が必要。

(4)レーガンのユーモアに学ぼう

   テフロン加工的な心とは、相手の言葉によって感情がかき乱されない心のこと。自分に余裕があると、嫌味や誹謗中傷的な噂話にも動揺しないという。生命の危機にあってジョークを忘れないレーガンの余裕ある態度を思い出そう。

(5)宮本武蔵の二刀流でストレスを減らそう

   この会社を辞めたら生きていけない、と思い詰めるとストレスはますます増加する。二刀流なら2つ目の戦略が取れる。実際に二刀流の実力があるかどうかはともかく、ダメだったら辞めて他の会社に移ればよいと視野を転じることも大切。

   もちろん、日ごろから二刀流の実力をつけておくのが望ましい。(佐藤隆)

佐藤隆(さとう・たかし)
現在、「総合心理教育研究所」主宰。グロービス経営大学院教授。カナダストレス研究所研究員。臨床心理学や精神保健学などを専攻。これまでに、東海大学短期大学部の学科長などを務め、学術活動だけでなく、多数の企業の管理職向け研修にも携わる。著書に『ストレスと上手につき合う法』『職場のメンタルヘルス実践ガイド』など多数。
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