「計算お手上げ」国民だらけ カンボジアで「箱もの」より切実なもの

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政府が厳しく取り締まると

   おちこぼれている状態で進学していくわけですから、当然、受験などで問題になるはずなのですが、そこに大きな闇があります。

   カンボジアの大学入試は、BACII試験という全国統一試験によって大勢が決まります。各大学の入学試験よりも、この高校卒業試験の結果が重視されます。奨学金の額もこの試験で決まります。しかし、これがカンニングの巣窟なのです。

   それも、隣の人の解答を盗み見するとか、参考書を持ち込んでチラ見するとかのレベルではありません。スマホを使ってfacebookで外の人に解答を聞いたり、イヤフォンを使って答えを聞いたりといった堂々たるカンニング。しかも、試験官に30ドルくらい払うと、見て見ぬふりをして見逃してくれるといいます。給料が安く生活に困った教師が、この試験の問題と解答を生徒に売り、みんながコピー屋でコピーするなどといったことも季節の風物詩でした。

   しかし、2014年、世界は変わります。

   政府が400万ドルを投じ、治安維持部隊までも投入し、このBACII試験でしっかりとカンニングを取り締まったところ、75%の学生が落第。高校卒業ができなくなりました。ちなみに、前年の落第率は13%。一体どれだけカンニングしていたんだと。

   仕方がないので、試験のレベルを思いっきり落として試験を行ったところ、合格率は40.6%に上がったそうです。

「なんで、身の丈に合った試験にしないんでしょうね?」
「カンボジア政府の、海外の教育機関に対する見栄だと思います」

   国の発展に国民の教育が必須だということを、途上国にいて強く感じます。カンボジアの場合、教育をする器としての学校が足りないという問題に加えて、教師が教授法や評価法についてきちんと学んでいないという問題があります。さらに、先生の給料が安く、つい問題用紙を売ってしまうというモラルの低さも問題です。加えて、東南アジアお決まりのいい加減かつ無責任な、その場さえよければ万事オッケー主義によってとどめを刺され、問題は永遠に先送りされます。

   ただし、カンボジアでは、カンニングの摘発が行われたというだけ、前進はしています。教えっぱなしではなく、それを定着させ、定着したことを確認するところまでできるようになると、この国も、より発展するのではないかと思います。学校という箱をつくるだけではなく、教授法やモラルの大切さまできちんと伝えられたらと思うのですが、それにはまだ長い時間がかかりそうです。(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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