先輩を置き去りにして総スカン 職場の「お約束」どう受け止めよう(高城幸司)

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   米国メジャーリーグ(MLB)と日本のプロ野球(NBP)。違いはたくさんありますが、その1つがアンリトン・ルールではないでしょうか。アンリトン・ルールとはルールブックに書かれていない規則。まさに暗黙のルールのことです。

   例えば、チームが5点以上勝っているときは、相手投手のボールカウント0-3 からの球をスイングしない。ホームランを打った瞬間、立ち止まって打球の行方を目で追ってはいけない。大きく点差が開いている後半戦で盗塁をしてはならない......といった内容。破れば、報復が待っています。

   この報復の洗礼を受けた日本人メジャーリーガーはたくさんいます。職場が変われば、適応する努力が必要。洗礼を受けたあとは、ルールを破らないようになって、メジャーリーガーとして環境に適応していくのでしょう。

飲みにも暗黙のルールがある

先に帰るのはお約束破り
先に帰るのはお約束破り

   さて、みなさんの職場にはアンリトン・ルールがありますか? 大抵の職場は「みんな仲間だよね」という集団意識=お約束が色濃く存在しています。そして、破れば報復が待っている職場もあります。

   取材したある会社では、先輩から飲みに誘われて同行した場合、終電まで、または上司や先輩がいる間は残らないといけないというお約束が暗黙知として存在していました。後輩が先輩から仕事の指導を受ける貴重な機会と捉えられて、社内では当たり前のお約束として脈々と続いてきたようです。後輩が帰りたいようなそぶりを見せると「わかっているよね?」という無言のプレッシャーがかかります。

   しかし、その「お約束」をわかっていながら、無視して帰ってしまったらどうなるか? 後輩のDさんは自宅が会社から遠く、入社間もない中途採用組のため、お約束など気にする必要などない......と考えてか、

「自宅が遠いのでお先に失礼します」

と席を立ち、帰ってしまいました。通常であれば「何をいっているのだ。まだ、飲むぞ」と引き留めるところですが、そのいとまを与えず立ち上がり、さっさと立ち去ってしまったようです。先輩は唖然としつつ、1人で飲み続けました。

数か月後には、とうとう

   さらにその後輩は「半分おいていきます」と飲み代をおいていきました。先輩が誘ったら、先輩が支払うのもお約束。翌日に「昨日はご馳走様でした」と御礼を言う姿が示されることで、先輩のプライドが保たれる形になっていました。ところが後輩は、状況を理解せず前日の御礼もありません。飲み代を半分払ったのですから、御礼などいらないと判断したのでしょう。

   後輩Dさんの行為は、相当マイナスに作用することになりました。翌日には、先に帰られた先輩経由で後輩のお約束破りが社内に共有され、

「あいつは転職するらしい」

とささやかれ、職場にいづらい状況になってしまいました。数か月後には、とうとう退職されたようです。

   みなさんの職場には、独自のアンリトン・ルールはありますか? 最近は、仕事のあとの飲み会の強要などはパワハラとみなされるのでお約束から外されつつありますが、日常の業務では様々なお約束があり、それを破ると......つらい目にあう状況の職場はたくさんあります。例えば、会議で意見を求められたら、

・否定的な発言はしない
・相手の発言を称える姿勢を示す

がお約束という職場もあります。会議の前に議題について経営陣と関係者がすり合わせをしており、形式的な会議に過ぎないので会議の場で反対意見が飛び出すことを誰も想定していません。以前に何回か反対意見を発言した人がいたようですが、その人は次の人事異動で会議に参加できない立場に変わることになったとのこと。ほとんどの人はお約束を守らなかった報復人事であることを理解したようです。

生まれた背景を理解しよう

   さて、大抵の会社には「上司が話し終わるまで、部下は発言してはいけない」「メールの文頭には必ずこの言葉を入れましょう」といった、これまでの経緯から決まり事になってきた「お約束」が存在します。客観的に見れば面倒なことが大半。そのプロセスを経なくてもいいのではないか、むしろすっ飛ばしたほうがいいんじゃないかと思えるかもしれません。

   ならば、どうしたらいいのでしょうか? まずはお約束が生まれた背景を理解してください。一見無意味に思えるお約束にも、生まれた背景があります。それを理解すると、大目に見て受け止めることができるかもしれません。あるいは、お約束を頭ごなしに否定するのではなく、建設的に改善する方法を思いついたら、それを提案してみてはいかがでしょうか。

   いずれにしても、自分が職場で心地よく仕事をするためにどうしたらいいのか、という視点で行動することをお勧めします。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
株式会社セレブレイン
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