武闘派大統領の当選でどうなるフィリピン? 危惧される法を守る意識の希薄さ

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法律による抑えが利かないと

   犯罪者を裁判にかけることなく、射殺し、暗殺してしまうとは、まるで昭和のドラマ「西部警察」です。石原裕次郎率いる大門軍団が、有無を言わさず容疑者をボコボコに殴ったり、アジトと思われるビルを、ヘリコプターからマシンガンで破壊したり、子供心に「これはヤバイ」と思いながら見ていました。

   21世紀の漫画で言えば「デスノート」。名前を書けば人を殺せる死に神のノートを手に入れた「夜神月(やがみらいと)」が「新世界の神になった」と言い放ち、犯罪者を問答無用に殺していく話です。

   このデスノート、手に入れた夜神月は、まずノートの仕様を確認するために、犯罪者を試しに殺すということから始めます。それから世の中をよくするためといって次々に犯罪者を殺します。さらに、腐った世の中を変えるのは自分しかいない、自分は「新世界の神となる」という意識をもった時点で、世の中をよくするために犯罪者を殺すというよりも、自分が神であり続けるために人殺しを続けるという、目的のすりかえが行われます。あげくに、自分を追ってきたFBIの捜査官を殺すに至って、自分の身を守るために人を殺すという、ダークサイドに墜ちていくわけです。

   たかが漫画ではありますが、権力を握った者が腐敗していく過程を巧みに戯画化していると読むことができるのではないでしょうか。

   新大統領ドゥテルテ氏も、これまでは正義のために悪いやつを殺していると信じていたはずです。しかし、彼もどこかの段階で踏み違える可能性があります。それを抑えるのが法律なのですが、その法律を犯すことをためらわない人間が権力を持つのは危険です。

   また、仮に彼がフィリピンの治安をよくしたとしても、それを見た他の国がまねをして、彼のような「私刑容認」の大統領を選んだときに、その大統領が独裁者として国民を大量に殺戮する可能性もないとはいえません。法律の抑えが利かなくなったときの暴走は、私の住むカンボジアのポルポトが国民の4分の1以上を殺したことからもわかるように、とてつもない悲劇を生み出します。

   フィリピンがこれからどうなっていくのか、注意深く見守っていく必要があると思います。(森山たつを)

森山たつを
海外就職研究家。米系IT企業に7年、日系大手製造業に2年勤務後、ビジネスクラスで1年間世界一周の旅に出る。帰国して日系IT企業で2年勤務後、アジア7か国で就職活動をした経験から「アジア海外就職」を多くの人と伝えている。著書に「アジア転職読本」(翔泳社)「はじめてのアジア海外就職」(さんこう社)がある。また、電子書籍「ビジネスクラスのバックパッカー もりぞお世界一周紀行」を連続刊行中。ツイッター @mota2008Google+、ブログ「もりぞお海外研究所
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