学生も採用側も「志望動機」もてあまし気味 ネタ切れにはこの手がある

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   今日のテーマは「志望動機」です。選考解禁が目前となり、面接に臨む学生も増えてきました。一方で、これからエントリーシートを提出するという学生も多数います。

   その際、志望動機をどう書くか、悩む学生をよく見かけます。文字通り、その企業を志望する動機(理由)を説明する必要があります。ところが、数多くの企業にエントリー・選考参加を希望する場合、志望動機をうまくまとめられない学生が少なくありません。

   どうすればいいのでしょうか。

「好き」では通用しない

「なぜ入りたい?」
「なぜ入りたい?」

   まずはNG例から。

「貴社製品が好きだったので志望しました」
「街づくりを通して社会貢献をしたいので」
「人と人とを結び付ける仕事を通じ、人を笑顔にしたい」
「自分自身を成長させたい」

   「書くな」とうるさく言ってもこういうのが、もはや志望動機のお約束となっています。大学のランクは無関係、東大・早慶クラスでも平気で書いてきます。もちろん、ボツ。

   「うちの商品が好きなら、これからもいいお客さんでいてください」で終わりです。「社会貢献」や「笑顔」も、どの企業でも言えることです。

   お次は、「自分自身を成長させたい」。自分のメリットを重視しているようで、嫌われます。「好きな仕事だから」も、厳しいところ。やはり自分のメリットを強調していると受け取られるのがおちです。専門職ならまだしも、総合職ともなれば、学生が考えつきもしないような「好きではない仕事」を押し付けられる可能性だって、現実にはあるのです。「そうか、好きでなければすぐやめるのか」と、企業側は考えるわけで。

みんな知っている学生の本音

   だったら「企業理念や社風に共感した」というネタならいいのでしょうか。

   これも微妙です。「使うな」とまでは言いません。ただ、やたらこの点ばかりを強調する学生が多すぎて。200字書けと言われれば、8割近くをこの企業理念・社風の説明に充てる学生が大勢います。しかも、企業理念・社風になぜ共感したか、理由を書くならまだしも、それそのものを説明するばっかり。そんなの、当の企業側がよくわかっているわけで。

   かくして、志望動機が「企業理念・社風の説明」にすり替わっているエントリーシートが続出します。

   実は企業側にとっても、志望動機や自己PRを質問に使うかどうか、悩みどころなのです。 エントリーシートにしろ、面接にしろ、志望動機・自己PRを聞いたところで、大した話が返ってくるわけではありません。就活生は、大量の企業を受けまくる中で、実際は志望動機など特になく、あえて言えば、

「どこでもいいから就職させてほしいから」

が、本音であることは、中小企業のみならず大企業でもよくわかっていることです。何しろ、採用担当者含め社会人の大半が学生時代、そうだったのですから。

   とりわけ、学生からの知名度が低い、機械メーカーや技術系商社などでは、志望動機を聞くこと自体がばからしいとさえ考えられています。何しろ扱う製品、部品、鉄鋼などの資材は、一般消費者とは縁遠いものです。それなのに鉄鋼のメーカーなり商社なりの志望動機で、「私は小さいころから鉄が大好きで......」なんて、どう転んでもウソというのがバレバレです。

   そういう事情もあって、志望動機・自己PRをエントリーシートでも面接でも使わない企業が増加中です。

   もちろん、残している企業も、機械メーカー・商社を含めて広く存在します。それはなぜかというと、採用担当者の現場レベルでは志望動機・自己PRがいかに無意味か、よくわかっているのだけれども、社長や経営幹部が、学生の志望動機・自己PRを聞いて喜ぶ、という事情があるからです。上が聞きたがるものを、現場が強く反対できるはずがありません。かくて、残す企業もそれなりにあるのです。

「男性目線で」→必要なし

   日本経済新聞社の『突撃取材!こちら就活探偵団』は、企業に取材した連載をまとめた就活本ですが、電子版でも読むことができ、一部の学生(新聞を読むごく少数)に広く読まれています。その連載当時、2012年1月25日の回が志望動機でした。

   取材に対し、ワコールでは、

「男性目線で女性用の下着を作りたい」
「女性の美しさを手助けしたい」
「女性がいきいきできるように手助けしたい」

などの志望動機が多いと回答。「男性目線......」については、「当社は女性のために女性目線で下着を作ってきているので、男性的な感性は必要ありません」とバッサリ。あとの2つについては、「『女性を応援したい』というのはワコールの存在理由であり、否定できません」とのことだった。

   同記事には、グンゼの担当者のこんなコメントも掲載されています。

「(社会経験のない学生が)もともと当社を深く知っているとも思えない。どの学生も似たような志望理由をいうのは、ある程度仕方がない」

   だったら、聞くなよ、と思うのですが。

   さて、このワコールですが、昨年2015年は、エントリーシートの志望動機欄にわざわざ「下着が好き、以外」と注意書きを入れました。よほど大量で、かつ、うんざりしていたのだろうことがうかがえます。

自己PRを志望動機に混ぜる

   それでは、ネタがない学生はどうすればいいでしょうか。

   就活本を色々読んでみたところ、『凡人内定完全マニュアル』(武野光、ポプラ社)に書いてある自己PR型志望動機が一番、自然かつ受け入れられやすい、と感じました。

   簡単に言えば、「自分は×××という人間性を持っている→それを役に立てられると思ったから志望した」という具合に、自己PRを志望動機にかなり混ぜるやり方です。

   これに、企業研究(仕事の内容など)を混ぜるのもあり。「志望先の企業にとって役に立つと思った」と強調するあたりがポイントです。仕事の内容を変えるだけで使い回しがきくので、量産できるのもメリットです。

   デメリットは、自己PRとの書き分けでしょうか。それと、志望動機としては、企業についての話がない分、なんとなく気持ち悪さを感じてしまうかもしれません。が、自己成長ネタ、製品が好きネタなどに比べれば、はるかにましです。

   『凡人内定完全マニュアル』は武野さんが学生を指導した経験を元に書かれたものです(下ネタもそれなりにあり)。気になる方はご一読ください。(石渡嶺司)

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
姉妹サイト