学生も採用側も「志望動機」もてあまし気味 ネタ切れにはこの手がある

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みんな知っている学生の本音

   だったら「企業理念や社風に共感した」というネタならいいのでしょうか。

   これも微妙です。「使うな」とまでは言いません。ただ、やたらこの点ばかりを強調する学生が多すぎて。200字書けと言われれば、8割近くをこの企業理念・社風の説明に充てる学生が大勢います。しかも、企業理念・社風になぜ共感したか、理由を書くならまだしも、それそのものを説明するばっかり。そんなの、当の企業側がよくわかっているわけで。

   かくして、志望動機が「企業理念・社風の説明」にすり替わっているエントリーシートが続出します。

   実は企業側にとっても、志望動機や自己PRを質問に使うかどうか、悩みどころなのです。 エントリーシートにしろ、面接にしろ、志望動機・自己PRを聞いたところで、大した話が返ってくるわけではありません。就活生は、大量の企業を受けまくる中で、実際は志望動機など特になく、あえて言えば、

「どこでもいいから就職させてほしいから」

が、本音であることは、中小企業のみならず大企業でもよくわかっていることです。何しろ、採用担当者含め社会人の大半が学生時代、そうだったのですから。

   とりわけ、学生からの知名度が低い、機械メーカーや技術系商社などでは、志望動機を聞くこと自体がばからしいとさえ考えられています。何しろ扱う製品、部品、鉄鋼などの資材は、一般消費者とは縁遠いものです。それなのに鉄鋼のメーカーなり商社なりの志望動機で、「私は小さいころから鉄が大好きで......」なんて、どう転んでもウソというのがバレバレです。

   そういう事情もあって、志望動機・自己PRをエントリーシートでも面接でも使わない企業が増加中です。

   もちろん、残している企業も、機械メーカー・商社を含めて広く存在します。それはなぜかというと、採用担当者の現場レベルでは志望動機・自己PRがいかに無意味か、よくわかっているのだけれども、社長や経営幹部が、学生の志望動機・自己PRを聞いて喜ぶ、という事情があるからです。上が聞きたがるものを、現場が強く反対できるはずがありません。かくて、残す企業もそれなりにあるのです。

石渡嶺司(いしわたり・れいじ)
1975年生まれ。東洋大学社会学部卒業。2003年からライター・大学ジャーナリストとして活動、現在に至る。大学のオープンキャンパスには「高校の進路の関係者」、就職・採用関連では「報道関係者」と言い張り出没、小ネタを拾うのが趣味兼仕事。主な著書に『就活のバカヤロー』『就活のコノヤロー』(光文社)、『300円就活 面接編』(角川書店)など多数。
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