成功の要因を尋ねると
「まだまだ成功への第一歩」と謙虚なY社長ですが、ここに至るまでの成功要因を尋ねてみたところ、次の3点を挙げてくれました。
1点目は、大企業の管理やマネジメント手法に学ぶことの重要性。
彼は大手企業のSE時代に多くのことを学び、それが今に活きていると言います。「製造現場の管理手法は、まんま酒蔵現場で応用が効いた」「どんなに優れたものを作っても、営業が怠けていれば売れることはない」などなどの発言にその真意が読み取れます。
2点目は、現場主義。
「経営者たるもの、現場に入らずして企業経営はできない」。Y社長は、酒蔵の製造責任者である杜氏を兼務し、今も「家に帰るのは週に1日か2日程度。ほとんど酒蔵で寝泊まりしています」という。「創業者は誰しも現場スタートだったはず。代替わりするごとに現場が遠くなるなら、企業もそれにつれて衰えていくと思う」とは、多くの企業の二代目、三代目が陥りやすいという点で、実に当を得た話に聞こえます。
そして3点目は、先代からの独立。
「先代を含め、創業来の代々経営者の業績は敬意をもって受け止めています。ただ自分が全責任を負わされた以上は、自分のやり方で道を切り開いていくしかないという決意が先代らとは違います。理由はどうあれ全権を託してくれた先代には感謝しています」。事業承継における意外な盲点を突いた一言ではないでしょうか。
若くして古い酒蔵の経営を見事に建て直した敏腕経営者の話を聞きたいと足を運んだ私でしたが、彼からは経営代替わりにおける知られざる秘訣を教えられた思いで当地を後にしました。Y社長が教えてくれた成功の秘訣3点は、業種問わず経営を譲る側、譲られる側双方にとって、大きなヒントになるのではないでしょうか。(大関暁夫)