前回、旅行者にとって東京並み、場合によっては東京以上のクオリティを誇る街であるとご紹介した台北。その物価は東京の3分の2から2分の1程度。こんな街に住めたらどんなに素晴らしいだろうか、と想像してしまいます。
では、素晴らしくコストパフォーマンスのよいこの街のことを、実際に住んでいる台湾人はどう見ているのでしょう? また、日本人が台湾で就職して生活するチャンスはあるのでしょうか? 今回は、この辺をお伝えしていきます。
大卒だらけだから大変
「私、早く台湾を出て、海外で仕事したいです。台湾、給料が安すぎます」
若い台湾人に話をすると、決まってこのような答えが返ってきます。台湾人の給料、実際に安いです。
まず、初任給が約8万円程度。
しかも、高校卒業後の進学率は95%以上。大学卒業時も競争が激しく、新卒就職制度なんてものはなく、最初から実力主義ですから職に就くまでが大変です。まずはインターンから始め、その後アシスタント職にやっとこ就いてこの給料。物価は安くても、不動産価格は東京と大差ないなので、正直この給料で生きていくのはかなり大変です。
そして、成果を出さないかぎり給料は上がりません。年功序列などといったものはありませんから、業務上の役割が上がらなければ、給料も上がりません。残業代が出ないところも多いです。実際、台湾人の平均年収は180万円くらい。月収でいうところの15万円。日本人は下がったとはいえ、年収400万円、月収33万円あるので、半分以下ということになります。
台北の物価は、ここ10年くらいでかなり上がっているそうです。しかし、給料は全然上がらない。とくに若者のアシスタント職に関しては、むしろどんどん下がっているのだそうです。にもかかわらず、みんな高学歴で、就職が大変なことが分かっているので必死に勉強をしています。英語が話せるなんてのは当たり前。求められる能力は上がり、給料は下がる。物価は上がる。日本の若者よりも大変そうです。
「そう言っても、日本より労働環境はいいんでしょ?」と、思われるかもしれません。確かに、残業大好きの日本人ほどではありませんが、台湾人も無駄に労働時間が長いです。私は世界中で日本の労働環境について話をしたことがありますが、「サービス残業」の概念をすっと理解してくれたのは台湾人だけでした。
「だから、海外でチャンスを掴みたいんです。中国でも、東南アジアでも、欧米でも、日本でも」
私が住んでいるカンボジアにも、大勢の台湾人がいます。彼らが海を渡って海外に行くのは、こういう切実な理由があるわけです。