「経営の継承」成功のツボ 調査結果から浮かんだキーワードとは

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   さて、今回は長寿企業研究の核心である「経営の継承」です。筆者が調査した企業は、平均144年の経営年数で、坂本龍馬が寺田屋で襲われた年に生まれた企業が平均像です、と以前お話しました。

   その間、平均で3回、経営者の交代があり、いま4代目がトップを務めています。調査によると、その継承にはたいへんな苦心が伴ったようです。すでに経営を継承している企業に勤めている方は、いままでの継承方法と比べてください。もし、スムーズに継承ができているとしたら、先代が相当な知恵者でありました。

同族にこだわらない。しかし・・・

世代から世代へ
世代から世代へ

   仮にスムーズでなかったとしても、いま生き残っているということは、崩壊しかかった世代交代を、誰か軌道にのせた人物がいます。会社がその人に巡り会ったのは千載一遇の好機でした。ほとんどの企業は継承する前に消滅しているように、経営の継承とは想像を絶するほどに難しいものなのです。

   調査ではまず、「後継者の人選で重要なこと」を聞いたところ、「同族であること」は1/3に満たない29%でした。ところが、「いままで経営の継承がうまくできた理由」を尋ねると、「同族経営を続けてきたから」が40%を占めます。さらに、「いままでの経営者の同族比率」を問うと、なんと80%が同族で占められていました。さて、これはどういうことが起こっているのでしょうか。

   人選においては、同族にこだわらない。しかし、いままではほとんどが同族内で継承してきて、うまく継承できたのも同族であったから、ということです。

   日本企業の99%は同族経営と言われます。上場企業3600社に限っても、明らかに同族経営でないのは38.7%でした(日本経済新聞、2015年)。

   民主主義が進んだ日本において、何の疑問もなく、同族内で経営を継承してゆくのは、よい人材の獲得や社員のモチベーションから考えても、けっして得策ではないように見えます。しかし、現実には他人である社員の中から後継者を選んだり、社外から有望な後継人材を抜擢したりすることは難しいことです。

浅田厚志(あさだ・あつし)
青山学院大学総合研究所・客員研究員で、長寿企業の経営哲学などを研究中。「出版文化社」代表取締役社長でもあり、創業以来、多くの社史・記念誌の企画制作や、出版企画プロデュースなどを手がけている。著書に『成功長寿起業への道』など。
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