「完全週5日制」「総合的な学習の時間の導入」など、2002年に行われた学習指導要領の改定、いわゆる「ゆとり教育」の波に洗われたゆとり世代。その第一世代とされるのが1987年生まれで、今や「アラサー」の年齢に達している。
彼らを主人公に配した宮藤官九郎脚本のドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)が2016年4月17日にスタート。その世代にどんぴしゃり属している若手から、自分の周囲のゆとり世代を持て余し気味の年長者まで、幅広い層の支持と共感を集めている。
叱ったら「会社辞めまーすwww」
ドラマは、食品メーカーに勤務して7年目の営業社員・坂間正和(岡田将生)、小学4年生のクラス担任を受け持つ教員・山路一豊(松坂桃李)、東京大学合格を目指し11浪中で、風俗店の呼び込みで生計を立てる、妻子持ちの道上まりぶ(柳楽優弥)の主人公3人の日常を描く。全員「ゆとり第一世代」の1987年生まれという設定だ。
目が離せないのは、坂間と、その後輩社員の山岸ひろむ(太賀)の絡みだ。
山岸は1993年生まれで、「どっぷりゆとり世代」の2年目。あまりのマイペースぶりに「ゆとりモンスター」の異名を取る。
成績不振で坂間が営業から居酒屋チェーン店舗に異動となり、担当していた得意先を山岸に引き継ぐと、山岸は、
「用もないのに得意先回りなんてぇ、泥仕事っしょ」
などと言い放ち、毎日営業メールを送るだけ。
当然の報いのごとく発注ミスを起こしてしまうが、やはり電話やメールだけで済まそうとヘラヘラしている山岸。得意先から連絡を受けた坂間は、本社に上がって「泥仕事させてやるよ!」と山岸を怒鳴りつけ、ミスで届けられなかった鶏肉が入った段ボールを持たせて山岸と謝りに行く。
「初めてちゃんと叱ってもらえた」と殊勝に見えた山岸だが、翌日には、
「会社辞めまーすwww」「あんな上司と働いてたらマジ死ぬわ」
などと、けつをまくるメッセージを営業部のLINEグループに一斉送信していた。
山岸は、「パワハラでうつになった」と坂間を責め立て、労災が認められなければ訴訟を起こすとまで言い出す。結局坂間は、事を丸く収めるため、納得いかないまま始末書を提出。山岸は会社を辞めず営業に残ることになり、パワハラ問題を起こした当事者同士は同じ部署では働けないということから、坂間は本社の営業に戻れないことになってしまった。
主役を食う勢いの山岸くん
山岸の恐ろしいまでの「ゆとりモンスター」っぷりに、1話目から茶の間は騒然。ツイッターでは、
「いくら何でも太賀さんみたいなあんな若い社員いるかな? 私は見たことがない」
「こんなヤツいるのかと思うと同じゆとりと思いたくない」
「わたしも平成生まれだけどあんなにひどくないぞ」
など、すさまじすぎる、現実離れしている、という声が相次いだ。
しかし、実際に似たようなモンスターに悩まされているという職場も少なくはないようだ。
「あのゆとりモンスターのやってることの、もうちょっとゆるいバージョンを、後輩が直属の上司にやってる。気に入らないことあると『それパワハラですよ?』みたいな」
「先週金曜日、遅刻早退を繰り返し、注意した上司に口もきかない問題社員に、坂間君と同じ様なこと言って"指導"してたんです。そー言えば、彼女もゆとり世代」
「太賀くんのゆとりモンスター役、デフォルメし過ぎって思う人は幸せな人。実際居るからね......」
学生からは、
「俺らが就職するときにはゆとりモンスターの上司がたくさんいるんだろうな」
というため息も聞こえてきた。
主役の3人を食う勢いの山岸だが、第4話(5月8日放送)では、飛び込み自殺した同世代の若者の家に、坂間に連れて行かれ、仏前で涙をこぼすシーンもあった。
ついに改心したのか。それとも「モンスター」のままなのか。(MM)