教える側の論理だけではいけない
1:新人教育に学ぶ側の論理を
新入社員教育の主流は「先輩のやり方を見て学べ」方式だ。「やって見せれば、その通りやるだろう」というのは、教える側の一方的な論理だ。基本的に「人は、自己の成長に結びつくという、内発的動機づけがなければ」教育効果がないと言われている。すなわち学ぶ側の論理も必要とされる。「何を学びたいのか、そのためにどうすればよいのか」話し合いながら、新人をスキルアップさせていきたい。
2:「心の傷」が影響することも
入社後すぐに退社するような場合、入社前の親子関係、恋人との軋轢など、学生時代に解決されずそのまま持ち越された問題が就職を機に露呈し、それが退社の引き金になることが少なくない。
本人の無意識領域にある「心の傷」や「心のしこり」は、自身も気づかないまま、自我の意思決定に影響を与えてしまう。それが「なんとなくしっくり合わないから、退職します」といった言葉で表されることも少なくない。
会社側の問題や上司のリーダーシップとは無関係なことが多い。この場合、会社や上司が自責的になることは、問題の本質から見て、正鵠を得た対応とは言えない。
3:「思い込み」より「傾聴」を
上司の「思い込み」が、五月病の原因になっている場合がある。
上司は自分の新入社員時代の経験に照らして新人を指導しがちである。経験は普遍性を持たない。時代も人も違うから、経験が役に立つとは限らない。
今では、新入社員教育の基本プログラムは「外発的動機づけ理論から内発的動機づけ理論の時代」に移行している。自分一人の経験から一方的に解釈、判断するのではなく、新入社員が成し遂げたいことや、考えていることを「傾聴」することから始めてみることが不可欠だ。(佐藤隆)